冬の楽しみ
季節のめぐる仕組みが、ファンタジーをとおしてかわいく描かれた楽しい絵本。
読み聞かせ目安 中学年 15分
あらすじ
6歳のお誕生日に、新しい本物のスキーをもらったウッレ。
雪が積もるのが、待ち遠しくてしかたありません。
クリスマスの2週間前、やっと雪が降り積もり、ウッレは大喜びでスキーを履いて出かけました。
森の中は、真っ白でとてもきれい!
「ありがとう、やさしい冬王さま。やっと きてくださったんですね!」
ウッレがいうと、目の前に頭のてっぺんから、つま先までまっ白なおじいさんが現れました。
ウッレは冬王さまかと思いましたが、そのおじいさんは霜じいさん。
霜じいさんはウッレを、冬王さまのお城に連れていってくれるといいます。
ウッレが霜じいさんと、お城へ行く途中、季節外れでやってきた、雪どけばあさんに会いました。
霜じいさんは雪どけばあさんを、きつく追い返します。
雪のお城へ着くとウッレは、威厳に満ちた冬王さまにお目通りします。
冬王さまは、ウッレが気に入り、スケート靴をくれる約束をしてくれました。
それからウッレは、霜じいさんとお城の中を見物します。
スキー靴を縫うおじさんたち。靴下を編むおばさんたち。ミトンを編む女の子たち。スキーやソリを作る男の子たち。
みんな、とても忙しそうに働いています。
クリスマスプレゼントの準備をしているのだそうです。
休み時間になると、子どもたちは思いっきり外で遊びます。
ウッレもいっしょに遊びました。
スキーにスケート、雪合戦にソリ遊び!
思う存分遊んだあとは、霜じいさんがトナカイに牽かせたスキーで、家まで送ってくれました。
その後、クリスマス・イブの朝のこと。
ウッレが玄関の外を見てみると・・・。
なんと、すばらしいスケート靴が届いていました!
ウッレは冬中、スキーやスケートを楽しみました。
けれどもやがて時はすぎ、雪どけばあさんがやってきて、雪をほうきで掃き消してしまいました。
ウッレはずいぶん怒りましたが、春の女王さまがやってくると、雪どけばあさんも、そんなに悪くないなと思いました。
読んでみて・・・
冬の楽しみ、冬というものがどういうものかということが、新鮮な子どもの喜びをとおして描かれた絵本です。
6歳になったウッレは初めて、おもちゃではない本物のスキーをもらい、雪が積もるのを楽しみに待っています。
そして、雪が積もるやいなや、早速スキーを履いて、意気揚々と森の中へ。
柔らかくすがすがしい水彩の雪景色は、雪を心待ちにしていたウッレの、純粋な喜びをそのまま表しているようです。
森の中をしばらく行くと、ウッレは全身真っ白のおじいさんに出会います。
ウッレは一瞬、このおじいさんを冬王さまかと思いますが、この人は一夜にして、すべてを真っ白な霜で飾ってキラキラにしてしまう霜じいさん。
現実の森に入っていった子どもが、すんなりとファンタジーの世界に入っていく瞬間です。
その後ウッレは、霜じいさんに連れられ、冬王さまのお城へ行きます。
左右に大きなアザラシを従えた冬王さまは、とても威厳に満ち、一見厳しく怖そうに見えます。冬という季節が、他の季節にはない、厳しさやおごそかさを持っているということを表しているのでしょう。
厚い氷で覆われた雪のお城も、おごそかで神聖な迫力があります。
でも、雪のお城も冬王さまも、決して怖くはありません。
冬王さまは、元気で素直なウッレがすぐに気に入り、ウッレもお城を楽しく見学していきます。
お城の中では、大人も子どもも、せっせとクリスマスの贈り物作りに大忙し。
冬の営みの中で、最も楽しいクリスマス。喜びの準備です。
見物しているうちに、ウッレの心にも、だんだんと喜びや、雪のお城の営みへの憧れが満ちてきて、休憩時間にはお城の子どもたちと一緒になって遊びます。
心ゆくまで楽しく遊んだウッレは、家まで送ってくれた霜じいさんとの別れ際に、
「うん、こんなにたのしかったのは、はじめてだよ!」
というほど、雪のお城を満喫しました。スキーにスケート、ソリ遊びに雪合戦。冬の遊びを、お城の子どもたちと、存分に楽しみつくしました。
ウッレは、雪のお城へ行く途中、雪どけばあさんという人物に出会います。
霜じいさんは、雪どけばあさんを、
「また こんなにはやくに でてきおって。とっとと ひっこめ! 春になるまで、かおをだすな!」
と乱暴に追い立てます。
ウッレはびっくりしますが、雪どけばあさんは、春の準備をするお手伝いさんなのですが、時々出てくる時期を間違えて、霜じいさんの仕事を台無しにするのだそうです。
雪どけの秘密を知ったウッレは、冬のあいだ、
「雪どけばあさん 雪どけばあさん ぼくらの雪を とかさないでね!」
とお願いしながら、雪遊びを楽しんで過ごしますが、それでもやがて春がきて、雪どけばあさんが、せっせと箒で雪を払いのけるようになります。
ウッレははじめ怒っていましたが、春の女王さまが白い蝶と一緒にやってくると、しだいに雪どけばあさんも悪くないなと思うようになっていきます。
自然のサイクル、不思議な季節の営みを、子どもの現実とファンタジーが入り混じる形で、幼い子どもの心に、すっと入っていくような感じで、描かれていると思います。
自然の不思議さを素朴に感じ、喜びの中で理解していく感覚が、とても素敵にかわいらしく描かれている絵本だなと思いました。
大人より自然に近く、その不思議な美しさに目を見張る、新鮮な子どもの眼差しと、豊かな自然の営みが、わかりやすく楽しく描かれたすてきな絵本です。
ウッレにスケート靴をプレゼントすると約束した冬おうさま。それをクリスマスに届けてくれる霜じいさんも心憎い、クリスマスの季節にぴったりの1冊です。
(なおこの絵本は、以前は『ウッレのスキーのたび』という題名で、フェリシモ出版から出版されていました。題名も表紙の絵も違うし、印刷の関係からか、色味も違って出ているところがあるので、一瞬違う絵本かと思ってしまいますが、中身は同じ絵本です。図書館などで並べてみると??、戸惑ってしまうかもしれません。ご注意をww)
今回ご紹介した絵本は『雪のおしろへいったウッレ』
エルサ・べスコフ作・絵 石井登志子訳
2014.2.28 徳間書店 でした。
雪のおしろへいったウッレ |
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