みみずくの子と3びきのこねこの育ちのお話
「かえでがおか農場」シリーズのうちの1冊。
読み聞かせ目安 高学年 18分
あらすじ
ある日のこと。嵐がきて、かえでがおか農場でいちばん古い木が倒れました。
子どもたちは、木のうろから出てきた、小さなみみずくの子どもを見つけます。
母親とはぐれ、まだ飛ぶことも、餌を探すこともできないみみずくの子を、農場で世話することになりました。
ピンセットで餌をやったり、点眼器で水を飲ませたりして育てます。
みみずくの子は、すくすく育ちました。
みみずくの子は、遊ぶのが大好き。
水浴びをしたり、ぐるぐる歩き回ったり、高いところへ登ったり。
大きくなってくると、もうかごには収まらず、あちこち飛び回ります。
みみずくは野性の動物。
やがて放してやる時期がやってきます。
餌をとる練習をしたあと、森に放しました。
みみずくも森の動物たちも、お互い興味津々。じーっと見つめています。
はじめのうちは、農場に帰ってきていたみみずくも、やがて来なくなりました。
野性に返ったのです。
ちょっと寂しいけれど、これでいいのです。
さて、農場には人と共に暮らすのが好きな動物もいます。
デカオとノラコ、ウェブスターの3匹のこねこは、農場で育ち、大人になりました。
大きく太っていて、いつもお腹をすかせているデカオ。
捨てねこだったノラコ。
神経質なシャムねこのウェブスター。
みんな性質は違うけど、寝るのが大好き。食べるのも遊ぶのも大好きです。
家中所狭しと遊びます。
3びきのこねこも、やがて大きくなり、納屋で暮らすときがきました。
デカオとノラコは、納屋が気に入りましたが、ウェブスターは納屋が嫌いで、なんとかして家に入ろうとします。
大人になったねこは、自分で餌を狩りにでかけますが、気難し屋のウェブスターだけは違いました。
読んでみて・・・
以前ご紹介した「かえでがおか農場」シリーズのうちの1冊です。
かえでがおか農場で育てたみみずくの子と、3匹のこねこのお話で、それぞれ別々に語られていきます。
まずはみみずくのお話。
嵐のあと、木のうろから出てきたみみずくの子。母親とはぐれてしまったので、農場で育てることになりました。
みみずくを初めて育てる子どもたちは、毎日興味津々。みみずくの生態について、いろんな発見をし、楽しんで育てます。
このお話は、『かえでがおか農場のいちねん』と同じく、子どもの目線から語られていきます。お話の筋は、決して起伏に富んだものではないけれど、動物を育てるという経験における気づきが、子どもの目を通して、とても豊かに新鮮に語られていきます。
眠っているかと思うと、急に体を伸ばし、こちらを睨むみみずく。
向こうを向いていても、頭だけこっちに向けることができたり、後ろ手を組んだ社長さんみたいに、ぐるぐる歩き回ったり!
柔らかくふわっとした羽は、風を切る音さえさせずに飛べたり!
みみずくの豊かな表情と動きに、子どもたちはすっかり驚き魅せられていきます。
でも、そんな楽しいみみずくの子との暮らしも、やがて終わります。
みみずくは野性の生き物で、森に返さなければならないからです。
かえでがおか農場の子どもたちは、みみずくが大好きだけれど、育てていく過程で、みみずくは人間とは違うもの、森の中で暮らす生き物なのだということを、しっかり認識しながら共に育ってきたので、別れをセンチメンタルに悲しんだり、ぐずったりはしません。淡々と別れの準備をし、森へと放してやります。
3匹のこねことの暮らしも同じです。
農場で生まれたデカオ。拾われてきたノラコ。お隣からもらってきたウェブスター。
3匹のねこの、それぞれの性格の違いをよく観察し、理解しながら育て、やがて大きくなると家の外へ出し、納屋へとその生活の場を移させていきます。
冷静に淡々と、みみずくやこねこを育てていますが、淡白というわけではありません。
人間とみみずく、ねこ。共に暮らすけれど、互いの領分を侵さない暮らし。
本来の生態を尊重する態度が、すっきりとわかりやすく描かれているのです。
柔らかく暖かい水彩の絵は、とても穏やかに、かえでがおか農場の人々と動物たちの暮らしを描き、テクストの描写も常に子ども目線ながら客観的。それでいながら、豊かな詩情があり・・・。とても穏やかに、場面は展開されていきますが、自然のリズムにそった躍動感もあって、常に眼差しが新鮮で、見る者を飽きさせません。
幼い命が、確かな手応えをもって成長すること。
生き物にはそれぞれ違った生態があり、それを侵すことはできないこと。
そういったことを、小さな生き物を育てることで、確かに感じ納得しながら、共に育っていく子どもたち。
現代は、自然との触れ合いが希薄になっているのはもちろんのこと、人間は人間自らの自然をも、今、領略しようとしています。今一度こんな豊かな暮らしを描いた絵本をとおして、命の本来のあり方を尊重する姿勢を、見つめ直したいものだと思います。
大きくなったデカオが、夜、狩りをするという野性に向き合ったとき、語り手の女の子はこういいます。
「人はねこのほんとうの主人にはとてもなれません。」
自然は、人間が飼いならすことはできないのです。
自然に対する深い畏敬の念が、子どもの語りをとおして、心の奥深くに伝わってきます。
こういった大切なことが、明るく楽しい絵と、小さい女の子の無邪気な語りで、自然と向き合い共に暮らした子どもの、驚きや喜びとともに描かれているので、きっとこの本を読む子どもたちにも(大人たちにも)、すんなり受け入れられることだろうと思います。
子どもが深い満足感をもって、育ちとともに、自然のあり方を納得していく描き方が、とてもすてきなすばらしい絵本です。
『かえでがおか農場のいちねん』とあわせて、ぜひご覧いただけると嬉しいです。
今回ご紹介した絵本は『みみずくと3びきのこねこ』
アリス・プロベンセン マーティン・プロベンセン作 岸田衿子訳
1985.12.15(初版)2020.8.20(新版) ほるぷ出版 でした。
みみずくと3びきのこねこ[新版] |
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