絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『おかあさんだいすき』

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「おかあさんのたんじょう日」

お母さんがいちばん喜ぶプレゼントを探して。

            

読み聞かせ目安  低学年  6分

あらすじ

今日は、だにーのお母さんの誕生日です。

だにーは、お母さんへのプレゼントを探しに出かけました。

 

まず、めんどりに会いました。

めんどりはプレゼントのために、卵をあげようといってくれました。

けれどだにーは、卵はもうあるからと断ります。

 

次に、がちょうに会いました。

がちょうは枕ができるように、羽をくれるといいました。

けれどだにーは、枕ならもうあるからと断りました。

 

次に、やぎに会いました。

やぎはおいしいチーズができるように、乳をくれるといいました。

けれどだにーは、チーズはもうあるからと断りました。

 

次は、ひつじにあいました。

ひつじは暖かい毛布ができるように、毛をくれるといいました。

けれどだにーは、毛布はもうあるからと断りました。

 

次は、めうしに会いました。

めうしは乳をくれるといいました。

けれどだにーは、牛乳はもうあるからと断りました。

 

最後にだにーは、山へくまに会いに行きました。

そうしたらくまは、だにーにとてもいいことを教えてくれました。

 

「うん、それが いいや」

 

だにーは喜んで家に帰り、お母さんの首にぎゅっと抱きつき、頬ずりしてあげました。

これがいちばんの贈り物だと、くまさんが教えてくれたからです。

                      

読んでみて・・・

お誕生日に、大好きなお母さんを喜ばせたい!

そんな子どもの一途な思いが、まるで昔話のようにトントンと、簡潔なお話運びで描かれていく絵本です。

 

お母さんの誕生日のプレゼントを、探しに出かけただにー

めんどり、がちょう、やぎ、ひつじ、めうしと会い、みんなそれぞれプレゼントになるいい物をあげるといってくれるけど、どれももう持っているものばかり。

ひとつひとつの出会いが、同じ形でトントンとテンポよく繰り返され、ひとつひとつが積み重なっていくさまは、昔話のリズムに通じています。

耳に心地よい、繰り返しのリズムは、幼い子どもの心に気持ちよく響くでしょう。

無駄のない簡潔なテクストもわかりやすく、知っているシチュエーションが積み重なっていくさまは、子どもの心に安心感と充実感を与えます。

 

けれど、だにーの求めるプレゼントはなかなかみつかりません。

どうなることやらとみていると・・・、最後はくまさんが、とてもいいことを教えてくれます。

プレゼントは、だにーがお母さんの首にぎゅっと抱きつくこと!

大好きなお母さんにしてあげられるいちばんいいことが、自分が抱きついてあげることだと知ったとき、子どもの心はなんと喜びに輝くことでしょう!

 

幼い子どもにとって、お母さんは世界の中心です。

いちばん信頼し、愛を感じる存在。

そのお母さんを、いちばん満たしてあげられるのが自分だなんて!

子どもの心がパアッっと明るくなるのが、目に見えるようです。

 

大好きなお母さんを喜ばせるために、自分で出かけ、自分で動物たちとやり取りし、そして見つけたいちばんお母さんを喜ばせるものが、自分であるということ。

子どもにとって、とても満足のいくお話になっていると思います。

 

絵も、素朴ながら確かなデッサンで、柔らかな色調が暖かい印象を与えます。

だにーもお母さんも動物たちも風景も、輪郭線がみな光輝くような黄色で縁取られているのが、まるでだにーの心の光輝く様子を表しているかのようです。

幸福感に満たされるような感じのする絵になっています。

 

そして何よりいいのは、お話の終わり。

お母さんの首にぎゅっと抱きついて、頬ずりしているだにーの笑顔!

眼がきらきらとして、いっそう顔が輝いています。

お母さんの表情は、後ろ姿なので見えませんが、きっと愛情に満ちた、包み込むような優しい笑顔であることが想像できます。

 

テクストも、くどくどしい説明などなくすっきりと、

 

「だにーは、おかあさんの くびに、ぎゅっと だきつきました。

 そうやって ほおずりして あげるのが、いちばんいい おくりものだよ と、くまさんが おしえて くれたからでした。」

 

でおしまい。

ベタベタと余計な感情の説明がなく、ここも昔話風に、ストンとお話が終わっていていいところ。あれこれ説明しなくても、豊かな余韻が感じられ、子どもの心が嬉しさに浸れるようになっています。

とてもさりげないけれど、心憎い終わり方だなと思います。

 

この絵本は「岩波の子どもの本」シリーズの1冊で、このシリーズは、1冊の中に2つのお話が閉じ込められているのですが、『おかあさんだいすき』もその例に漏れず、「おかあさんのたんじょう日」のあとに、もうひとつ「おかあさんのあんでくれたぼうし」というスウェーデンのお話が入っています。・・・が、こちらの方は残念ながら、あまり出来がよいとはいいづらく・・・。どうか「おかあさんのたんじょう日」だけで、1冊の本になってくれたらいいなあと思ってしまいました。

 

今回ご紹介した絵本は『おかあさんだいすき』

マージョリー・フラック文・絵 光吉夏弥訳

1954.4.15  岩波書店  でした。

おかあさんだいすき

マージョリー・フラック/大沢 昌助 岩波書店 1954年01月01日頃
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