かもさんの巣作り、子育て、お引越し
かもさん一家のお引越しを街中で見守る楽しい絵本です。
読み聞かせ目安 中学年 12分
あらすじ
かものマラードさん夫婦は、巣を作る場所を探して飛んでいました。
ボストンの街まできて公園へ。でも、そこは人や自転車がいっぱいで落ち着けません。
ボストン上空を飛び回り、ようやく良い場所を見つけました。
チャールズ川の中州です。
島は静かで、ピーナッツがもらえる公園も近くでした。
マラードさん夫婦は、巣を作り、卵を8つ産みました。
やがて、卵は孵り、8羽のひなが生まれました。
ジャックにカック、ラックにマック、ナックにウァック、バックにクァックの8羽です。
マラード夫婦は、嬉しさで胸がはちきれそうでした。
こがもはすくすく育ち、1列になって泳ぐこと、歩くことを学びます。
そして、すっかり上手になったある日、お母さんを先頭に、1列に並んで公園へお引越し!
でも、ここは大都会ボストン。
道路は自動車がひっきりなしに行き交います。
かもさん一家のお引越しを見た、お巡りのマイケルさんは大慌て!
パトカーを呼んで交通整理です。
お巡りさんや街の人たちに見守られ、かものマラード一家は、無事公園に引っ越すことができました。
読んでみて・・・
かもさん一家のお引越しを、街中で見守る、心がほっこりと暖まる絵本です。
春から初夏のこの時期、各地の水辺や公園で、かもの引っ越しを目にします。テレビのニュースなどでも、しばしば取り上げられ、かわいらしい姿にほっこりさせられますよね。
かもは、水辺の草や小魚、昆虫などを食べて暮らしていますが、その水辺に餌が少なくなってきたり、カラスなどの天敵に狙わはじめたりしてくると、より餌が豊富で安全な場所にお引越しをするのだそうです。
この絵本の、マラード一さん一家も、そんなお引越しをするかもさん一家。
はじめはお父さんのマラードさんと、お母さんのマラードおくさんの2羽で、巣を作り、卵を産むのによい場所を探します。
見開き画面いっぱいに、ゆうゆうと広がる山々、湖、小さな家々。
セピア色のコンテで描かれた絵は、かものマラードさん夫妻の目線から、まさに鳥瞰的に描かれます。
山野から飛んできた夫妻は、大都会ボストン上空へ。
マラードおくさんは、子育てのため慎重に場所探し。
すてきな池や島がある公園。池には餌になる生き物はたいしていませんでしたが、ボートに乗った人たちが、ピーナッツをくれます。
でも・・・、「あぶない!」
自転車が猛スピードで走っていきます。
こんなところでは、子どもは育てられません。
子育てにより良い場所を探して、チャールズ川の中州に行き着いた夫妻は、ここに巣を作り卵を産みました。
絵本は、ずっとセピアのコンテ描きのまま。すべての画面が、大きく見開きいっぱいに伸び伸び描かれています。人間は、ちょっとコミカルにマンガチックなタッチで。それに対して、かもさんたちや自然の風景は、写実的に描かれています。
親がもの姿は堂々と。毛並みもしっかりととのって、つややかで丈夫そう。それに対して、生まれたばかりの小がもたちの毛は、ほわほわしていて柔らかくたよりなげ。
それぞれが、いきいきと対比的に描かれ、特徴がきわだって見えます。
8羽の小がもたちは、みな同じ小さなかわいらいい様子ですが、8羽それぞれの性格もよく表されています。しっかりお母さんに付いていく子、虫に気を取られながらあるく子、最後に遅れてドタバタいく子。それぞれが表情豊かにユーモラスに描かれています。
そうそう、表紙見返しの見開きの絵も面白く、卵が孵る様子が、順を追って描かれるようになっています。
丸い卵にひびがはいり、ひながちょこんと顔を出し、ぱっかり割れて柔らかな毛のひなが誕生!生まれたかと思ったら、すぐに毛づくろいして、意気揚々と楽し気に歩きだすさまもユーモラスです!
小がもの名前は、ジャック、カック、ラック、マック、ナック、ウァック、バック、クァック。みんな、かもの鳴き声のような名前ですが、この名前の連呼が全編とおして4回繰り返されます。生まれたとき、お母さんの後を付いて泳いだり、行進して歩いたりするときなどです。とてもリズミカルで、まるでかもたちが歌いながら行進しているよう。何度も繰り返すので、聞いている子どもたちもすぐ覚えたしまい、いっしょに声を合わせてくれる子もいます。とても楽しい場面です。
お巡りのマイケルさんをはじめ街の人たちは、マンガチックに描かれていますが、みんなとても暖かい人柄が伝わってきます。
いつもかもさんにピーナッツをくれるマイケルさんは、恰幅がよく、大きな体。ぷっくりと厚みのある手が、いかにも優しそう。立派なお巡りさんですが、かもさん一家のお引越しを見て、大慌て!!急ぎ応援を頼んで、マラード一家のために交通整理をするさまは、とてもコミカルでユーモラスです。
かもさんのお引越しを見守る、街の人々は、本屋さんのおじさんも、お客さんも、道行く人々も、みんな暖かな目で微笑みを浮かべて、楽しそうに注目しています。
そんなみんなに見守られて、マラードおくさんはとても得意そう!優雅にお尻を振り振り、かも歩きです。
お母さんの後を1列に並んで、よちよち歩きで付いていく小がもたちもかわいいこと!!
白地にセピアだけの、抑えた色遣いですが、かもさんのお引越しを、本当に間近でみているような気分になります。
上空からの鳥瞰的な遠景と、かもさんたちにクローズアップされた近景の描きわけも、シンプルな色遣いの絵本に、リズミカルなメリハリを与えていて飽きさせません。
そして最後は、ボストンの街の地図。
かものマラードさん一家のたどった道の全体を、鳥瞰して楽しむことができるようになっています。
表紙も濃い緑の地に、白とセピアだけ。一見地味な絵本ですが、どこを取っても暖かくかわいらしく、心なごむこの絵本は、子どもたちを惹きつけます。
かもさんを穏やかに見守る眼が、見ている人の心も穏やかにさせるのですね。
わが家の近くにも、小川と公園があり、その隣には、いつも読み聞かせをさせていただいている小学校。かもさんの姿を見ることもあり、そのたびに、この絵本のマラード一家のことを思い出し、また読みたくなってしまいます。
ほっこりと心暖まる絵本です。穏やかな陽気に包まれて、ぜひどうぞ!
心なごむこと間違いなしです!!
今回ご紹介した絵本は『かもさんおとおり』
ロバート・マックロスキー文・絵 渡辺茂男訳
1965.5.1 福音館書店 でした。
かもさんおとおり |
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