絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『くるくるかわるねこのひげ』

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変幻自在な線の遊び

 洗練と素朴。ユーモアと暖かさの同居する絵本です。

くるくるかわるねこのひげ

ビル・シャルメッツ/武本佳奈絵 文渓堂 2014年06月
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by ヨメレバ

 読み聞かせ目安  中学年・高学年  3分

 あらすじ

 ある日、女の子が釣りをしていると・・・なんと、ねこが釣れました!

ねこには、とってもとっても長いひげがあって、しかも自由自在に操れます。

女の子は、ねこのひげと手をつなぎ、家へ帰り、いろいろなことをして遊びました。

縄跳びにキャッチボールにお絵かきetc・・・。

ねこのひげはお花にも、屋根の風見鶏にもなります。

 

でも・・・、ある日、誰かに捕まって、ねこはサーカスに入れられてしまいました!

ねこは、サーカスでひげの曲芸をさせられます。

檻の中では、女の子のことばかり頭に浮かび、泣いていると・・・いいことを思いつきました!!

 

ねこは自慢のひげで、鍵を作り檻から脱出!!

走りに走って、山超え谷超え、海を渡り、線路をつたって、空をも飛んで・・・

 

ふわり。女の子のもとへ、帰りました。

「ただいま。」

「おかえり。」

 

 

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読んでみて・・・

 伸びやかな発想。変幻自在な線の遊びで描かれた絵本です。

 

お話は、いたってシンプル。女の子と仲良くなったねこが、さらわれ、サーカスに入れられてたのち脱出し、女の子のもとに帰るというもの。

このシンプルなお話を彩っているのは、変幻自在な線で描かれたねこのひげ

もう、ねこのひげが物語を語っている、といっていいほどなのです。

 

長く長く伸びたねこのひげ

まず表紙では、作者のBill Charmatzという名前がひげで書かれ、それからくるくるかわるねこのひげは、ねこ自身になり、女の子に釣り竿で釣られていきます。(ついでに、ねこといっしょに釣られる魚も、このねこのひげでできています。釣り糸もねこのひげです!)

その後ねこのひげは、縄跳びの縄になったり、5線譜になったり、絵の具のパレットやお花、風見鶏、高層ビルにまでなってしまいます。

 

まさに変幻自在!!

 

誘拐犯にぐるぐる巻きにされるのも、なんと自分のひげ!!

そして、サーカスから脱出するのも、自分のひげで形作った鍵!!

 

お話のすべてを、ひげで進めていくのです。

 

自由なユーモアと、遊び心いっぱいのこの絵本。

 作者は、ビル・シャルメッツという、長年「ニューヨーク・タイムズ」や「ワシントン・ポスト」などで、イラストを手掛けていた人物。大人の新聞・雑誌などで、ちょっと毒気のあるユーモアたっぷりのイラストを、描いていた人なのだそうです。

そういわれてみると、なんだか納得。

ちょっと大人っぽいねこの表情や、優雅な線の流れは、とても洗練された印象があります。白地に、赤、黒、黄色、くすんだ緑だけの色遣いも、シックです。

 

でも、シックで大人っぽいばかりではなく、伸び伸びと描かれた線画と、その余白は、とてもゆったりとしていて、解放感があります。

 

そして、なんといっても最後、ねこが女の子のもとに、ひげで作った翼で飛んで、ひげで作ったパラシュートで着地し、帰ってくるところ。ひげで作ったブランコに、女の子と2人でゆらゆらしながらの、

 

「ただいま。」

「おかえり。」

 

ねこは、誘拐されてから女の子のもとに帰ってくるまでのあいだ、怖さ、心細さ、つらさ、苦しさ、さまざまな大変な思いをしてきました。そんな思いを乗り越えて、女の子のもとに帰ってきたとき、さぞかしほっとしたことでしょう。

女の子も、パラシュートで降りてくるねこを見つけて、駆け寄ってきます。きっとず~っと、ねこを心配していたのでしょうね。

 

最後のページの、ねこのひげブランコの場面は、ねこと女の子の、何とも安心しきった穏やかな笑顔が印象的。とっても暖かく、心がやわらぐ場面になっています。

 

洗練と素朴、ユーモアと暖かさいっぱいの絵本です。

シンプルなお話ですが、見ごたえは十分!短い絵本なので、他の絵本との組み合わせにぴったりです。

特に、中~高学年の鑑賞にも耐えられる短い絵本は、なかなかないので、じっくり聴かせるお話や素語り、などとの組み合わせにおすすめ。じっくり聴いて感じ考えたあと、こんな絵本を組み合わせて読むと、ちょっと心を自由に解放してあげられるのではないかなと思います。

 

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 今回ご紹介した絵本は『くるくるかわるねこのひげ

ビル・シャルメッツ作  武本佳苗絵訳

2014.6  文溪堂  でした。

 

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