絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『フロプシーのこどもたち』

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ピーターのきょうだいフロプシーの子どもたちのお話

 レタスを食べると眠くなる?!

            

 読み聞かせ目安  中学年  7分

あらすじ

 ピーターのきょうだいフロプシーは、いとこのベンジャミンと結婚し、子どもをたくさん産みました。

 

ある日、フロプシーの子どもたちは、マクレガーさんの畑のゴミ捨て場に捨ててあった、花が咲いてとうがたってしまったレタスをたくさん食べて、ぐっすり眠り込んでしまいました。

 

そこへマクレガーさんがやってきて、子どもたちを発見!

マクレガーさんは、フロプシーのこどもたちを袋の中に入れ、袋の口を縛って行ってしまいました。

 

お父さんのベンジャミンとお母さんのフロプシーは、途方にくれました。うさぎは袋の口を開けられないのです。

でも、そこでずっと様子を見ていた、野ねずみのトマシナ・チュウチュウが、袋をかじって穴を開けてくれました。

ベンジャミンは、子どもたちを袋から出し、かわりにしなびた野菜や古い靴ブラシを入れておきました。

 

何も知らないマクレガーさんは、袋を持って家に帰ります。

マクレガーさんは、うさぎの皮を売って、煙草を買うといいました。

奥さんは、うさぎの皮を、自分の外套の裏地にするいいました。

 

けれども・・・、袋の中に入っていたのは、くさった野菜!

奥さんもマクレガーさんもかんかん!!

 

窓の外から、こっそり見ていたうさぎたちは、くすくす笑って家に帰りました。

トマシナ・チュウチュウは、うさぎの毛をいっぱいもらい、暖かい外套や頭巾、マフや手袋を作りました。

                      

 読んでみて・・・

 ピーターラビットのきょうだい、女の子のフロプシーは、もうこの本では大人になっていて、いとこのベンジャミンと結婚し、お母さんになっています。そして今回は、そのフロプシーの子どもたちのお話です。

 

子どもたちが、マクレガーさんの畑に行くと、運のよいことにゴミ捨て場にはレタスがいっぱい!子どもたちはお腹いっぱい食べました。でも、

 

「れたすをたべすぎると、『さいみんやく』のようにきく」

 

ということで、子どもたちはぐっすり眠り込んでしまいました。

実際、レタスに含まれるラクチュコピクリンという成分が、眠気を誘うらしく、ヨーロッパなどでは不眠症の治療に用いられることもあるとか。でも、日本でよく出回っている普通の丸いレタスには、このラクチュコピクリンの量は少なく、多く含まれているのは、ヨーロッパ種のラクツーカ、ビローサといった品種のレタスなのだそうです。その次に、サニーレタスやサンチュなどが続くそう。ラクチュコピクリンは、原種に近いいわゆる葉レタスに、多く含まれる成分らしく、フロプシーの子どもたちが食べたのも、きっとそういうレタスだったのでしょうね。絵を見ると、やっぱり葉レタス、といった感じのレタスになっています。

 

で・・・、レタスを食べてぐっすり眠り込んだ子どもたちは、マクレガーさんが刈ってきた芝を、上からどっさりかけても、お母さんのフロプシーが、干し草の寝床の中へ自分たちを運んでくれる夢をみたり、マクレガーさんに袋に入れられても、寝床でお母さんに寝がえりをうたせてもらう夢を、うっとりとみるばかり・・・。ちっとも危険を感じません。目覚めることなく、にっこり微笑みを浮かべて、かわいい姿で眠り続けます。

 

幸い、ねずみのトマシナ・チュウチュウさんが、袋を噛み切って助けてくれたので、マクレガー夫妻に食べられることも、皮を売り飛ばされたり、奥さんのコートになったりすることもなく、お家に帰ることができました。

 

「小さい ふとぉったうさぎが、1、2、3、4、5、6ぴきよ!」

 

うさぎの皮を期待するマクレガー夫妻の欲の張り合い、うさぎたちにまんまといっぱい食わされる姿が滑稽です。うさぎたちが、ちゃっかり後をつけていって、事態を見守り、くすくす笑っているのも愉快です。子どもたち、おじいさんのようにならなくてよかったね!(子どもたちのおじいさんは、かつて、マクレガーさんに肉のパイにされてしまっています!)

 

のどかでゆったりとした落ち着きのなかに、ユーモアがあって「ピーターラビットの絵本」シリーズは、本当にどれも心なごみます。

写実的だけれど、かわいらしく暖かみのある絵。

レタスの根元で輪になって眠る、フロプシーの子どもたちの、福々としてかわいいこと!

マクレガーさんの片手のひらに乗っているうさぎも、なんて小さくてかわいいの!!

柔らかな水彩で描かれた、マクレガーさんの庭の花や緑も、輝くような美しさが印象的。

そして、人間には人間の。動物には動物の。それぞれの都合や社会があり、その接点が愉快に混じわりあう。架空のお話でありながらも、いかにもさもありなんという感じを自然に起こさせる魅力のある、いつまでも色あせないすてきな絵本だなと、読むたびに思います。

 

ピーターラビットとその仲間たちの楽しいお話。また次の機会に、他のお話もご紹介していきたいと思います。

 

 今回ご紹介した絵本は『フロプシーのこどもたち』

ビクトリアス・ポター作・絵  石井桃子

1971.11.1  福音館書店  でした。

フロプシーのこどもたち

ビアトリクス・ポター/いしいももこ 株式会社 福音館書店 2019年11月01日頃
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なお、『フロプシーのこどもたち』は「ピーターラビットの絵本」集では、第1巻3集として収められていますが、ビクトリアス・ポターの製作年代は1909年、ピーターラビットシリーズ第14作目にあたる作品になります。

 

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