ロシアの素朴な昔話
おおらかでのんびりとした味わいのある昔話絵本です。
読み聞かせ目安 低学年 3分
あらすじ
ひとりの女の子が森へ遊びにいきました。迷ってしまって帰り路がわかりません。気がつくと森の中に、ちいさな家がありました。
この家は、3匹のくまの家でした。
1匹は、お父さんぐまで名前を、ミハイル・イワノビッチ。
2匹目は、お母さんくまで、ナスターシャ・ペトロ―ブナ。
3匹目は、ちいさなくまの子で、ミシュートカです。
3匹は散歩に出ていたので、女の子が家に来たときは留守でした。
女の子は誰もいないので、3匹のくまの家に入りました。
女の子はくまの家の食堂で、机の上の3つのお椀から、スープを一口ずつ、順に飲みました。
3つの椅子にも順に座って、一番ちいさい椅子でスープを飲み干し、しまいに椅子を壊してしまいました。
次に、女の子は寝室へ。3つのベッドを順にためし、一番ちいさいベッドで眠っていると・・・。3匹のくまが帰ってきました!!
3匹のくまは、誰かが自分たちのスープを飲んだり、椅子に座ったのに気づきます。
寝室に行くと誰かがベッドに入った跡が・・・。そして、ミシュートカが見つけました!!
「みつけた!つかまえて、つかまえて!このこだよ、このこだよ!はやく、はやく!つかまえて!」
女の子は目を覚まし、急ぎ窓から逃げました。
読んでみて…
ロシアに伝わる昔話を、文豪トルストイ(1828~1910)が再話したものです。
のどかで素朴でおおらかなお話です。
昔話らしく、無駄がなくすっきりと一直線にお話が進みます。
ですが、細かいところは結構細かい。
お父さんくまの名前は、ミハイル・イワノビッチ。お母さんは、ナスターシャ・ペトロ―ブナ。こぐまはミシュートカ。くまにしては、ずいぶん立派な名前が付いていて、なんだか笑えてしまいます。
お家の中の状況も、ひとつひとつ丁寧に説明してあります。
食堂の机にあるおおきなお椀、中くらいのお椀、ちいさいお椀、それぞれが誰のものか、ひとつひとつ説明し、おさじも椅子も、寝室のベッドもひとつひとつ丁寧に説明してあります。
読んでいる子どもたちは、初めに家族構成がはっきり説明されているので、容易にどれが誰のものかわかり、楽しくテンポよく、お話の進むにしたがって謎解き確認ができ、それもしっかり正答できて、自己肯定感と安心感を得ながら、お話を楽しむことができます。
子どもたちは、くまの家に紛れ込んだ女の子や、ちいさなミシュートカに共感しつつ読むだろうと思います。
女の子が見つかってしまわないか、女の子が逃げきれるか、ハラハラドキドキ。
ミシュートカのスープを飲んだり、椅子を壊した犯人が突き止められるか、捕まえられるか、ハラハラドキドキ。
ちょっとしたスリルを味わいながら読み進めることができますが、最後はなんともあっけなく、
「おんなのこは、めをさまして 3びきの くまに きがついて、まどのほうへ はしりました。まどが あいていましたので、おんなのこは まどから そとへ とびだして、にげました。
3びきの くまは、おんなのこに おいつけませんでした。」
で、おしまい。
追及したり糾弾したりせず、大陸的というかのどかというか、おっとりのんびりした昔話らしいのどかさがあります。
絵も、ロシアのお話らしいフォークロアな東欧的な色合いで、ほっこり暖かみのある絵になっています。
ひょうひょうとしたくまたちの表情はとてもユーモラスです。
お話の最初と最後に描かれたくまの家の屋根にとまった雄鶏は、とぼけたような大きな丸い目で、事の成り行きをを見守っているようで、のどかさをいっそう引き立てています。
テクストも方も、無駄のないすっきりした語り口で進んでいきますが、ミハイル・イワノビッチとナスターシャ・ペトロ―ブナ、ミシュートカのセリフは、それぞれ文字の大きさを変えて、体や声の大きさに合わせて大中小となっています。
読み聞かせをするとき、普段、私は、読み手はあくまでもお話の渡し手、黒子であると思っているので、自分が前に出すぎるような声色は使わないように心がけていますが、このお話は、やっぱりちょっと別。文字の大きさに合わせて、少しだけ、声の大きさや色をつけて読んでいます。(そのほうがテクストに忠実なような気がするので)
この絵本は、表紙見開きの野原の模様もすてき!!
フォークロアな、テキスタイルパターンのようで可愛いなと思います。
のんびりとして、おおらかで素朴で、ちょっととぼけた味わいのある、とても楽しい昔話絵本です。
今回ご紹介した絵本は『3びきのくま』
バスネツォフ絵 おがさわらとよき訳
1962.5.1 福音館書店 でした。
3びきのくま |
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