時計つくりに魅せられた男の子のお話
一途でひたむきな姿に目を奪われる絵本です。
読み聞かせ目安 高学年 15分
あらすじ
ジョニーという、とても手先の器用な男の子がいました。
しょっちゅうのこぎりやかなづちで、何か作っていたジョニー。
好きな本は、『船のもけいのつくりかた』と『テーブルといすのつくりかた』、そしていちばん好きなのは『大時計のつくりかた』という本でした。
そんなジョニーが、ある日とてもいいことを思いつきます。
「ぼくも、大時計をつくろう」
けれども、お父さんもお母さんも相手にしてくれません。できるわけがない、そんな暇があったら、家の手伝いをしろといいます。
学校の先生にいっても相手にされず、おまけにそれを聞いていた友達からも、からかわれるしまつ・・・。
でも、スザンナだけは、ジョニーを応援してくれました。
ジョニーは家に帰るとひとり、板を切って時計作りをはじめました。
扉の付いた大きな箱。
文字盤を入れる穴を開け、ボール紙で文字盤を作り、錫箔で長針と短針も作りました。
けれども、時計のしかけ作りに必要な、歯車と重りと鎖とふりこがありません。
ジョニーは、金物屋さんや自動車修理屋さんにいってみましたが、ありませんでした。
お父さん、お母さんにお願いしてもダメでした。
スザンナに相談すると、
「かじやのジョーさんに きいてみたら?」
というので、鍛冶屋のジョーさんのところへいってみると・・・歯車も鎖も重りもありました!
ふりこはなかったけれど、ジョーさんが「ふるこ」を鉄で作ってくれました‼
せっかく揃った材料を、途中でいじめっこに奪われるアクシデントもありましたが、何とかジョニーは、時計を作りあげることができました。
出来上がった時計を見ると、みんなはびっくり!
すっかり感心して、もう誰もジョニーをばかにしたりしませんでした。
そしてなんとすてきなことに、お父さんが、時計作りの道具をたくさん買ってくれ、ジョーがいっしょに、時計屋さんをはじめようといってくれたのです!
ジョニーは、国中でいちばんの時計作りになりました。
読んでみて・・・
大時計を作りたいという思いにかられた、小さな男の子のひたむきな姿が、みずみずしく描かれた、美しい絵本です。
手先がとても器用なジョニー。
まだ小さいけれど、始終トントンカンカン何か作っています。
お父さんお母さんは、
「あのこときたら!また ばかなことをやっている」
とあきれ顔。
せっかくジョニーが、時計作りを思いついても相手にしてくれません。
誰からもばかにされ、できっこないと決めつけられますが、ジョニーは一途に時計を作っていきます。
この絵本は、テクストはとても簡潔。甘ったるさなどなく、お話は淡々と進んでいくのですが、絵がとても雄弁に、ジョニーの一途さ、ひたむきな姿を語ってくれます。
もう、それは最初のページから。
くぎとかなづちで何が作っているジョニー。
椅子に乗って、小さな体を伸ばして、高い棚の本を取るジョニー。
時計作りを思いつき、はち切れそうな胸を抱えて、走り出すジョニー。
小さな体に、みずみずしい思いが溢れているのが、よく伝わってきます。
親にも先生にも友達にもばかにされて、落ち込むジョニー。
時計の部品を、懸命に探し求めるジョニー。
何度も困難にぶつかりますが、一途な思いはそれらを乗り越えていきます。
乗り越えるのに、それを実に上手にサポートしてくれる、スザンナという女の子も魅力的です。
優しくて思いやりがあって、周りに流されず、ジョニーの力を信じて、困ったときはいつも助けてくれるのです。小さいけれど自分をしっかり持った、すてきな女の子です。
鍛冶屋のジョーさんもすてき。
いかにも職人らしい感じ。おおらかで優しくて真面目な人柄が、大きな姿から伝わってきます。
どんなに困難があっても、ひたむきにがんばっていれば、八方塞がりでも、どこかから救いの手が出て、必ず成し遂げられる。
夢を追い求める子どもに、ぴったりな絵本だなと思います。
カラーとモノクロページが交互にでてくる構成の絵の数々も、一見さらっとしていて、地味にも見えますが、各ページとても丁寧に描き込まれていて、細かいところまで、じっくり読み込みたくなる絵になっています。
ジョニーがふいごを動かして、ジョーさんが鉄を溶かして打って作った「ふるこ」(ジョーさんには、訛りがあるようで「ふりこ」を「ふるこ」といってしまいますw)。
モノクロページですが、できあがった「ふるこ」は、堂々として、立派な宝物のようです。
その宝物のような部品を使って、ジョニーが時計を組み立てていく場面は、モノクロながら、見ていてドキドキします。
ふりこが揺れて、チクタクチクタク。
遅すぎたり早すぎたり。
上手くいくのかしら?
次のカラーページになると、調整がしっかりできて、時計はとうとう完成!
ほっと安心して、ジョニーは眠りにつきます。
この寝姿も、実にかわいい♡♡
満足しきって、くたっとぺたっと、いかにも子どもらしく、うつ伏せて寝ています。
どの絵もとてもさりげなく、一見ラフに描かれているようですが、デッサンは確かで、実はとても丁寧。すみずみまで愛情が込められ、いつまで見ていいても、見飽きない絵の数々になっています。
簡潔で無駄のないテクストと、細やかで雄弁な絵が融合し、一途で純粋でひたむきな少年の姿を描いた、本当に素敵な絵本だなと思いました。
どのページも、ひっそりとした中に、きらめくような生命感のある、みずみずしい絵本。読後に満ち足りた思いと、優しさ柔らかさが清らに残る、そんな印象を残す素敵な絵本です。
今回ご紹介した絵本は『時計つくりのジョニー』
エドワード・アーディゾーニ作 あべきみこ訳
1998.7.1 こぐま社 でした。
時計つくりのジョニー | ||||
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