絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『ティッチ』

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堂々として… 

劣等感を自己肯定感に。

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読み聞かせ目安  低学年  3分

 あらすじ

ティッチは、三人兄弟の末っ子の男の子です。

 

兄さんのピート、姉さんのメアリはティッチより体が大きく、持っているものもすべてティッチより大きくて立派です。

 

兄さんたちは自転車を持っているのに、ティッチは三輪車。兄さんたちは空高くあがる凧を持っているのに、ティッチは風車。楽器や大工道具も、兄さんたちはみんな大きくて本格的で立派なものをもっているのに、ティッチのものはぜーんぶちっぽけな、おまけのようなものなのです。

 

でもでも、最後に兄さんの大きなシャベルと姉さんの大きな植木鉢に植えたティッチの小さな小さな種は・・・芽を出してぐんぐんぐんぐん伸び、とても大きく、兄さんの背丈よりも大きくなるのでした!!

                      

読んでみて…

小さな子どもによくあるシチュエーション。ともすると劣等感を抱きがちな場面が繰り広げられますが、ティッチはひるみません。

 

兄さんたちは自分たちの持っている立派なものを、自慢げに見せびらかすのですが、ティッチは自分が持っているものを手に、兄さんたちに一生懸命ついていきます。

そして最後に、ティッチの蒔いた小さな小さな種が、大きく大きく育ったときの、ティッチの嬉しそうな顔!!兄さんたちの驚いた顔、負かされた顔と対照的に、自身に満ち満ちています。

 

子どもたちは日常、多かれ少なかれこんな経験を繰り返し育ってくるので、みんなに共感するところがきっとあるでしょう。最後にすっきりとティッチの自尊心が満たされたとき、子どもたちの自尊心も満たされ、心が晴れる思いをすることだと思います。

 

この絵本は、こんな、子どもたちによくあるシチュエーションを、実にすっきりさっぱりと、気持ちよく描いています。白地にパステル調の色で描いていますが、甘くなりすぎることなく、どちらかというと淡々と描いています。それでも全体から感じられる暖かさは、小さいながらも人と人との間で、ちょっとした劣等感を抱きながらそれを乗り越え、自尊心や自己肯定感を育んでいく子どもへの期待と愛情を、この本がもっているからなのでしょう。

 

現代の子どもは、学校でアンケートを取ると、たとえ学力やその他もろもろの能力が高くても、自己肯定感の低い子が結構いるのだそうです。『ティッチ』の表紙には、ティッチが自分の持っているちっぽけなものに囲まれながらも、正面を向いて堂々と立っている姿が描かれています。裏表紙にはそのティッチの後ろ姿が描かれていますが、この後ろ姿も正面同様、実に堂々としています。『ティッチ』を読んだ子どもたちも、ティッチのように、小さくても堂々と、自信を持って自分の足で立っていってほしいなと願います。

 

ちなみにこの本は「低学年向き」としていますが、他の本との組み合わせならば、3年生くらいまででも大丈夫だと思います。

 

 今回ご紹介した絵本は『ティッチ』

パット・ハッチンス作・絵 石井桃子

1975.4.25 福音館書店  でした。

ティッチ

パット・ハッチンス/いしいももこ 株式会社 福音館書店 1975年04月27日頃
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