絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

ライオンとねずみ

エジプトの昔話

イソップにも類話のあるお話。

            f:id:masapn:20211201155517j:plain

読み聞かせ目安  中・高学年  10分

あらすじ

昔、強いライオンが住んでいました。

ライオンは狩りが好きで、他の獣たちから恐れられていました。

 

ある日のこと。ライオンはヒョウに出会います。

見ると、ヒョウの毛はちぎれ、皮はボロボロ。

人間にやられてしまったというのです。

ライオンは怒って、人間を探しにでかけました。

 

しばらく行くと、今度は馬とロバが、馬車に繋がれ、口には轡をはめられていました。

これも人間の仕業です。

ライオンは、ひどく腹を立てました。

 

その後もライオンは、人間に角を切られ、鼻に穴を開けられ、綱で縛られた牛や、爪や歯を抜かれてしまったクマに出会います。

ついには自分と同じライオンが、人間にだまされて、砂漠の木に挟みこまされ、目に砂を投げつけられているのにも出会いました。

ライオンは、人間を探して、みんなの仕返しをしようと思いました。

 

するとそのとき、1匹のネズミが、ライオンの足元へやってきました。

ライオンがネズミを踏みつぶそうとすると、ネズミは命乞いをし、助けてくれたらいつか必ず恩返しをすると約束をします。

ライオンは、ネズミを離しました。

 

その後のことです。

ライオンは、狩りをしていた人間に捕まってしまい、網にかけられてしまいました!

 

そこへあのネズミがやってきて・・・、ひもを噛み切り、ライオンを助けてあげました。

 

                    f:id:masapn:20211201155644j:plain

 

読んでみて・・・

古代エジプトの昔話です。

 

捕らえられたネズミが、逃がしてもらったお礼に、ライオンを助けるというお話は、イソップやラ・フォンテーヌにも類話があり、御存じの方も多いかと思います。

でも、このお話は古代エジプトのお話。パピルスの巻物に書かれたのが、紀元200年くらいらしいのですが、お話自体の成立はそれよりもっと古く、紀元前800年ごろなのだそうで、そうするとイソップなどよりもずっとずっと古くから、このお話は語られていたということになります。

 

そしてイソップと比べて特徴的なのは、ライオンとネズミの逸話の前に、何度も何度も、動物が人間に苦しめられ、人間がいかにずるくてひどい生き物であるかが、重ねて語られているところでしょう。

人間って古代からずっと、自然に対して横暴だったんですね・・・。

そしてそれを自覚していながら、何百年、何千年たっても変わらない。

人間であるのが恥ずかしくなってしまいます。

 

この絵本は前回ご紹介した『運命の王子』と同じ、リーセ・マニケによるものです。

masapn.hatenablog.com

制作の手法も同じで、パピルスの巻物に書いてあるお話を、翻訳してなったものなのだそうです。

パピルスには、象形文字の草書体「デモティック」という書体で書かれていたらしく、この絵本にも、裏表それぞれの表紙見返しに「デモティック」体が書かれて、雰囲気をよく伝えています。

絵も『運命の王子』と同じく、古代エジプトの出土品などから、お話に合う絵を選んで、付けられたのだそうです。

 

ただ、『運命の王子』と比べて見てみると、ちょっとこちらの『ライオンとネズミ』の方が、なんとなく見劣りがしてしまうように感じます。

たくさん動物がでてきますが、絵に統一性があまり感じられず、背景の草木も、取って付けたようなお粗末さが感じられ、『運命の王子』がすばらしかっただけに、ちょっと残念です。

 

それでも、ライオンが人間に捕らえられる切迫した場面は、はっとするような強い美しさがあります。

見開きいっぱいに、砂漠の上に細く輝く三日月を抱いた、大きな漆黒の夜空が広がり、そこで網をかける人間と、捕らえられる雄々しいライオンの姿には、目を見張るものがあり、エジプトの造形も十分に堪能できます。

次のページの、ネズミによって網から解放されたときの、ライオンの安心しきった表情も豊かです。

こちらもまた見開きいっぱいに、ネズミに助けられたライオンの大きな姿。ほっとしたライオンの穏やかな顔。自慢げな小さなネズミの対比が鮮やかで、とても印象的な場面になっていると思います。

 

全体を通せば、『運命の王子』よりはちょっと見劣りがしていしまいますが、それでもやはり、古代エジプトの息吹が感じられる、とても稀有な絵本です。

なかなかエジプトのお話に触れる機会は少ないと思うので、ぜひ『運命の王子』とあわせて、楽しく美しく知的な刺激を、子どもたちに感じてもらえたら嬉しいなと思いました。

                     f:id:masapn:20211201155746j:plain

今回ご紹介した絵本は『ライオンとねずみ』
リーセ・マニケ文・絵  大塚勇三

1984.10.26  岩波書店  でした。

ライオンとねずみ

リーセ・マニケ/大塚 勇三 岩波書店 1984年10月26日頃
売り上げランキング :
by ヨメレバ

ランキングに参加しています。ポチっとしていただけると嬉しいです。

いつもありがとうございます。

にほんブログ村 本ブログ 絵本・児童書へ
にほんブログ村


絵本ランキング

 

このブログに掲載している著作物の書影・書誌データ等は、版元ドットコム・各出版社ホームページ・個別の問い合わせ等を経て、使用の許諾を確認しています。