絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『ほんとにほんとにほしいもの』

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『かあさんのいす』の続きのお話

瓶に貯まったお金で今度は何を買うのかな?

            

読み聞かせ目安  高学年  10分

あらすじ

あと3日で、わたしの誕生日。

 

前に、かあさんの椅子を買うのに貯めた瓶のお金は、また半分くらいまで貯まってきました。いまでもかあさんは、仕事でもらったチップを、おばあちゃんは節約できたお金を、わたしはお手伝いのお駄賃を、瓶に入れています。アイダおばさんとサンディおじさんも、時々入れてくれます。

 

「ねえ、こんどなにを買うの?」

 

わたしが聞くと、かあさんはおばあちゃんに、わたしの誕生日のプレゼントを買うことを提案してくれました!

小銭をお札に替え、早速かあさんと買い物にいきました。

 

「ローザ、ほんとにほんとにすきなものを買うんだよ!」

 

おばあちゃんはいいました。

 

わたしは、何がいちばん欲しいものかわかっていたので、まっすぐローラースケートのお店にいきました。

試着をして、店員さんに包んでもらって、かあさんがお金を払おうとしたとき・・・

急にわたしは、ローラースケートがほんとにほんとに欲しいのかどうか、わからなくなりました。

 

結局、ローラースケートは買わずに店を出て、向かいのデパートへいきました。

わたしは、デパートで水玉模様のドレスと、お揃いの上着と、青いサンダルを試着して、店員さんに包んでもらいました。

でも・・・かあさんがお金を払おうとしたとき、お洋服やサンダルがほんとにほんとに欲しいのか、わからなくなりました。

 

次はキャンプ用品店です。

わたしは、ナップザックにいろんなものを詰め込んで、サンディーおじさんのトラックで、旅行にいくつもりになってみました。

 

「わたし、これがほしかったんだ」

 

でも、店員さんが包みはじめ、かあさんがお金を払おうとしたとき・・・また、これがほんとにほんとに欲しいのか、わからなくなってしまいました。

 

店を出て、わたしは泣き出してしまいました。

かあさんは笑って、ブルータイル食堂で、おやつを食べることになりました。

 

食堂を出ると、街角で誰かが楽器を弾いています。

 

「あれ、なに?」

 

わたしが聞くと、かあさんはアコーディオンだと教えてくれました。

とうさんちのおばあちゃんが、よく弾いていたのだそうです。

公園や結婚式で。

おばあちゃんのアコーディオンを聞くと、椅子やテーブルでさえも、踊り出しそうだったそうです。

 

わたしは楽器屋さんで、中古のアコーディオンを買ってもらいました。

これがわたしの、ほんとにほんとに欲しいものだとわかったからです。

                      

読んでみて・・・

前回ご紹介した『かあさんのいす』の続編にあたる絵本です。

masapn.hatenablog.com

最初のページを開くと、『かあさんのいす』の最後のページにあったのと、同じ写真の絵が載っています。

欲しくて欲しくて、大きな瓶にみんなで小銭をためて、探して探して、やっとみつけたバラ色の椅子に、かあさんとおばあちゃんとわたしが、ぎゅうぎゅう詰めになって座っている写真です。

『かあさんのいす』で味わった、あの幸福感に満ちた感じが、ぱあっと一気によみがえってきます。

そしてすぐにまた、「わたし」の気さくなおしゃべりがはじまります。

 

かあさんのいすを買って、ほとんどなくなってしまった瓶のお金は、また少しずつ増えてきました。

 

「ねえ、こんどはなに買うの?」

 

わたしのウキウキした声が聞こえます。

つましい暮らしのなかで、家族みんなで、時にアイダおばさんとサンディおじさんも加わって、せっせと貯めた小銭たち。みんなの夢と期待が積み上がっています。

このお金で今度買うことになったのは・・・なんとわたしこと、ローザの誕生日プレゼントです!

おばあちゃんに、

 

「ほんとにほんとにすきなものを買うんだよ!」

 

といわれたわたしは、真っ先にローラースケート屋さんへ。

自分のほんとにほしいものは、とっくにわかっているわたしは、迷わずローラースケートを買ってもらおうとしますが・・・いざ、ローラースケートを買う段になってみると、これがほんとにほんとにほしいものなのか、わからなくなってしまいます。

 

店を替え、洋服やサンダルにしても、ナップザックを背負ってみても、その度ごとに、楽しむ姿を想像して、これこそは!と思いますが、迷いは尽きず、最後は泣き出してしまうしまつ。

 

みんなで貯めた大事なお金を、ほんとにほんとにほしいもののために使う。

わたしが、真剣にお金の使い道を、ほしいものが何であるかを悩んでいる姿が、ひとつひとつの品を目にして、それを身に付け使い、仲良しのお友達とともに楽しむ空想が、わたしの目線でそれぞれくわしく語られていくので、わたしが何を、どれくら大事に思っているのかがよく伝わってきます。

店内の様子も、細部までていねいに描き込んであるので、ひとつひとつのものへの憧れや期待、買い物の楽しさも、よく伝わってきます。

 

でも・・・大事に思えば思うほど、迷いは深くなり・・・。

子どもの真摯さと、妙に⁉論理的なところが、実に上手く描けていると思います。

決められなくて、泣きだしてしまうところでは、自信をなくし身が縮んでしまって、途方に暮れている姿が、なんとも憐れでいじらしく、そして微笑ましく感じられます。

 

そんなわたしを、優しく見守るかあさんもステキ。

わたしの長い買い物に、業も煮やさず付き添って、泣き出してしまった娘には、身をかがめて額をくっつけて、にっこり微笑んで、ひと休みしようと励まします。

 

このページでおもしろいのは、泣き出す娘&励ます母の図が、鳩の母娘でも、同じように描かれているところ!

 

この『ほんとにほんとにほしいもの』という絵本は、前作の『かあさんのいす』でもそうでしたが、それぞれのページにその場面にあったきれいな縁取りが描かれているのですが、わたしが泣き出すこの場面では、周りにたくさんの鳩が描かれていて、その鳩の中から2羽の親子が、テクストページでローザ&かあさんと同じポーズをとっているのです!

 

各ページの縁取りは、それぞれわたしのそのときの気持ちを伝えているようです。

最初のページは、あの『かあさんのいす』のバラ模様。

ローラースケートのところでは、靴ひもがぐるぐる巻き。

わたしの気持ちもぐるぐる巻き。

キャンプ用品店では、キャンプ場の空を思い。

泣き出す場面では、どんよりと深~い緑色に。

でも、ブルータイル食堂でおやつを食べているうちに、気分も晴れて、ブルータイルのようにさっぱりと。

そして、ほんとにほんとにほしいものアコーディオンと出会ったときは、光り輝く星々に彩られていきます。

 

一見ラフな水彩画のようですが、色合いといい、縁取りの細やかな心配りといい、細部までとても気の利いた絵本です。

ローザやかあさん、おばあちゃん、登場人物はみな、端役でさえも、カラスでさえもw、人懐っこくて愛嬌があります。

家の中も、好きなものが所狭しと置いてある感じが、ささやかだけれど居心地のよい住まいであることを伝えています。

 

前作の『かあさんのいす』同様、暖かさと幸福感に満ちた絵本です。

 

最後にやっとみつけた、ほんとにほんとにほしいものも、ほんとにステキです。

とうさんちのおばあちゃんが、上手だったアコーディオン

公園や結婚式で、人を楽しませていたアコーディオン

中古だけど、こうして手に入れたわたしのアコーディオンも、これからきっと、家族やお友達、町の人々を楽しませていくのでしょう。

 

「ぜったいにほんとにほんとにほしかったもの」がやってきた朝。

明るい黄色いページに、さわやかなブルーの縁取り。

ブルーの地には白い花々が咲き誇っています。

 

わたしのベッドの側にアコーディオンはあり、かあさんとおばあちゃんは台所で朝ご飯を作っています。

ちょっとくたびれてきたバラ色の「かあさんのいす」と、空っぽになったあの大きなガラスの瓶も見守っています。

 

期待と幸せに満ちた、ステキなお話の終わりです。

 

 

今回ご紹介した絵本は『ほんとにほんとにほしいもの』

ベラ・B・ウイリアムズ作・絵 佐野洋子

1998.4  あかね書房  でした。

ほんとにほんとにほしいもの

ベラ B・ウィリアムズ/佐野 洋子 あかね書房 1998年01月01日頃
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