お洒落で可愛くて楽しい絵本
パリで暮らす元気な女の子たちのお話です。
読み聞かせ目安 中学年 5分
あらすじ
パリのある古い屋敷に、12人の女の子が、ミス・クラベルというシスターと一緒に暮らしていました。
12人の女の子は、いつも2列に並んで行動します。食事も、歯磨きも、お散歩も。
12人の中で一番のおちびさんがマドレーヌ。おちびさんですが、ねずみもトラも怖くないお転婆さんです。
先生のミス・クラベルは、何事にも驚かない人でしたが、ある日の真夜中、
「ようすが どうも へんですね」
女の子たちの部屋へいくと、マドレーヌが大泣きに泣いています!慌ててお医者様を呼びました。
マドレーヌは盲腸炎に罹っていたのです!
マドレーヌは、救急車で病院へ。緊急手術です!!
2時間後、マドレーヌが目を覚ますと、そこはきれいな花を飾った病室でした。
たちまち10日間がすぎ、ある晴れた日に、ミス・クラベルと女の子たちは、マドレーヌのお見舞いにやってきます。
女の子たちが恐る恐る病室に入っていくと・・・
「わあ!すごい!」
病室には、おもちゃにキャンディー、人形の家!
中でもみんながたまげたのは、マドレーヌの手術の傷跡!!
病院から帰った夜、またまたミス・クラベル
「ようすが どうも へんですね」
また一大事かと心配して、走りに走っていってみると・・・
11人の女の子みんなが
「わーわー、もうちょうを きって、ちょうだいよー」
と泣いているのでした。
読んでみて…
フランスらしい、とてもお洒落で可愛い絵本です。
まず、表紙を開けると見開きいっぱいに、パリのコンコルド広場が、色鮮やかに広がります。そこに、12人の女の子が、ミス・クラベルと一緒にお散歩しています。
絵は、明るく淡い黄色をベースに、白黒のみで描かれたページを軸に、時折、鮮やかなカラーぺージが、差し挟まれる構成になっています。
淡い黄色が、明るく優しく、女の子たちとミス・クラベルの楽しい生活を想像させます。
そして、時折挟まれるカラーページの美しさ!!
色鮮やかながらも深みがあり、パリのシックな街並みを、エレガントに描き出しています。筆致はやや粗めなのですが、細部まで細かく描き込まれてあり、色の深さ、重層性が絵に暖かみを与えています。
明るく暖かく美しい絵によって繰り広げられる、12人の女の子のたちの暮らしも、また明るく楽しそうです。
女の子たちは、いつもお行儀よく2列に並んで行動します。ミス・クラベルによく躾けられた良家のお嬢さんたちの暮らしというわけですが、この絵本からは、寄宿舎生活の堅苦しい暮らしなどは微塵も感じられません。
ちいさな女の子たちが、いつでもどこでもきっちり2列に並んで行動しているのを、ページを追って次々見ていくと、なんだかとてもユーモラスなのです。
並んでいる子の顔は、とてもあっさり点と線で描かれているだけなのですが、すましていたり、笑っていたり、怒っていたり、喜怒哀楽が良く見えます。子どもらしい感情のほとばしりを、お行儀の良いきっちり2列の中に真面目に収めてしまっているギャップが、妙に笑いを誘うのです。
そして、何より愉快なのは、入院生活・手術という非日常を、子どもたちが面白がっているところ。
マドレーヌの盲腸炎は、手術で軽快し、何の心配もなさそうなので、みんなこの顛末を楽しみ、羨んでいます。
入院や手術という、めったにない経験を自慢したり、羨んだりする。いかにも子どもらしい感情です。
ミス・クラベルも、一見すると黒衣に身を包んだ真面目なシスターのようですが、いつも2列に並んだ女の子たちを、後ろから暖かく見守っています。
「ようすが どうも へんですね」
と気づくや、走りに走るその姿は、これまたとってもユーモラス!!
背の高いミス・クラベルの体が、ドアからドアへ長く長ーく斜めに伸びて、子どもたちの所へ急ぎ駆けつけたい心情があふれまくっているのです!!
いつもは穏やかで物静かなシスターの姿とのギャップが、とても愉快に描かれています。
お洒落で、明るくて、可愛くて、子どもらしい、楽しさあふれる絵本です。
寄宿舎生活という見慣れない暮らしや、おしゃれな外国の暮らし、そんなものに憧れるちょっとおしゃまな女の子には、特におすすめの絵本です。
今回ご紹介した絵本は『げんきなマドレーヌ』
1972.11 福音館書店 でした。
げんきなマドレーヌ | ||||
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