爬虫類への情熱
爬虫類館初の女性学芸員のお話。
読み聞かせ目安 高学年 10分
あらすじ
ジョーン・プロクターは、トカゲやヘビが大好きな女の子。
いつもお人形の代わりに、お気に入りのトカゲを連れて歩きます。
お家では、トカゲやヘビ、カメをじっくり観察。詳しい記録もつけていました。
16歳の誕生日に、ワニの赤ちゃんをもらうと、リボンを付けてお散歩もするようにもなります。
大きくなったジョーンは、ある日、自然史博物館の学芸員に会いに行きました。
2人はヘビのウロコの話で大盛り上がり!
学芸員は、すぐにジョーンの才能に気づきました。
やがて戦争が始まり、男の人たちが兵隊に取られると、自然史博物館は人手不足になり、ジョーンが科学者として働くようになります。
ジョーンの働きはすばらしく、次々に論文を発表したり、本物そっくりの爬虫類の模型を作ったり。
年取った学芸員が引退すると、ジョーンが跡を継ぎました。
ジョーンは、ロンドン動物園の爬虫類館の設計も担当しました。
ジョーンが特に力を入れたのは、コモドドラゴン!
体長9メートル!車より速く、雄牛より強い、生きた本物のドラゴンです‼
ジョーンとコモドドラゴンのスンバワは、とても仲良しになります。
ジョーンの研究や診療の技術は、世界中に広まり、爬虫類館は大成功。ジョーンも時の人となりました。
ジョーンが車椅子の生活になっても、ジョーンの傍らには、いつもスンバワがいたそうです。
読んでみて・・・
爬虫類館初の女性学芸員の伝記絵本です。
ジョーン・ビーチャム・プロクターは、19世紀末、まだ女性がドレスを着て暮らしていた時代に、イギリスに生まれました。
小さい頃から、お人形遊びより、トカゲやヘビと遊ぶのが大好きだったジョーン。
裕福な家庭に生まれ、お母さんは画家。おじいさんはマンチェスターの実業家で、芸術支援者、自然史愛好家。家にはとても広い庭があって、自然観察や動物の飼育にはうってつけの、恵まれた環境で育ったようです。
体が弱く学校も休みがちなジョーンでしたが、高校生になると、大英自然史博物館のジョージ・アルバート・ブーレンジャーのもとで、動物学を学ぶようになり、高校を卒業するとジョージの助手として博物館で働くことになります。弱い体で、大学進学も諦めなければならなかったジョーンでしたが、願ってもない職を得て、それからは研究一筋!19歳の若さで毒蛇に関する論文を発表。ジョージの引退後は彼の仕事を引き継ぎ、爬虫両生類学者となります。
研究だけでなく、お母さんゆずりの芸術的センスにも恵まれたジョーンは、爬虫類のスケッチや模型作りでも才能を発揮し、自然史博物館で大活躍していきます。
そして1923年。ロンドン動物園に爬虫類担当の学芸員として迎えられると、最新の技術をもって、爬虫類たちが安定した環境で暮らせる爬虫類館や診療所を建てました。
ジョーンの設計は、科学的正確さと芸術的センス、そして爬虫類への愛情が合わさった、素晴らしいものだったのだそうです。
特に力を入れたのは、インドネシアから来たオオトカゲ、コモドドラゴンのスンバとスンバワの部屋。特にスンバワとは、治療をきっかけに強い絆で結ばれ、その友情はジョーンの晩年まで続いたそうです。
この絵本では、そんな爬虫類に魅せられたジョーンの姿が、ユーモアと美しく洒落た絵の数々で描かれています。
カラフルでありながら、ちょっとくすみがかった色遣いは、生き生きとしていながら上品でモダンです。爬虫類はちょっと苦手、という人でも抵抗なく受け付けられる美しさです。
弱ったスンバワの部屋に躊躇なく入っていって治療する場面や、学会発表の場にも、スンバワを同席させる場面からは、爬虫類への深い愛情や、みんなをびっくりさせるユーモアなどが感じられ、ジョーンという女性の魅力が存分に伝わってきます。
まだまだ女性が外で仕事をすることが少なかった時代に、ひとりの女の子が、子どもの頃から好きだったことを仕事にできた幸せなお話。
ジョーンには、慢性の腸疾患があり、幼いころから痛みに苦しみ、わずか34歳で亡くなってしまったのだそうですが、病気を抱えながらも研究への熱意に燃え、人生を楽しみきった充実した時間を送った人物だったのだなということが伝わる、とても素敵な絵本です。
好きなことに一途に生きるすがすがしい人生を、子どもたちにも送って欲しいものだなと思いました。
真摯な愛情とすがすがしさが心に残る美しい絵本です。
今回ご紹介した絵本は『ドラゴンのお医者さん』
パトリシア・パルデス文 フェリシタ・サラ絵 服部理佳訳
2019.5.31 岩崎書店 でした。
ドラゴンのお医者さん ジョーン・プロクター は虫類を愛した女性 | ||||
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