絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『どんぐりぼうやのぼうけん』

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秋の陽だまりで楽しみたい絵本

のどかで素朴でおおらかで楽しい森のお話です。

            

読み聞かせ目安  中学年  15分

あらすじ

どんぐりぼうやのオッケとピレリルは、かしわの木の上にある家に、お父さんとお母さんと住んでいました。

 

ある秋の日のこと。

オッケとピレリルは、かしわの葉を飛行機にして、風に乗って森の外へ飛んで行きました。ふたりがどすんと落ちたところは、小人のおばあさんたちの洗濯場。洗濯物の小人のひげを汚されたおばあさんたちは、かんかんに怒り、ふたりに洗濯物運びを命じます。

 

オッケとピレリルの姿が見えなくなった家では、お母さんが心配し、りすのスバンス氏とはしばみの子のヌッタが、探しにいきました。けれどもなかなか見つかりません。

すっかりくたびれてしまったヌッタは、スバンス氏とはぐれてしまい、ひとりぼっちになってしまいます。小人のおじいさんや怖いトロルに会い、心細い思いでいると、出会ったトカゲの案内で、やっとのことでオッケとピレリルに会うことができました。

 

3人は葉っぱで作ったいかだに乗って、家に帰ることにしました。

途中、マロニエの子どもたちと遊んでいると、必死に子どもたちを探していたスバンス氏に会い、たくさん叱られてします。

その後は、みんなでスバンス氏の背中に乗って、家に帰りました。

 

帰り着くと、お母さんもはしばみ夫人も大喜び!

さっそくパーティーの準備です。

お母さんは、すっかり世話になったスバンス氏に、かしわの木の家の部屋を貸し、スバンス一家はお引越し。

みんなで楽しいパーティーになりました。

 

読んでみて・・・

のどかで明るくて微笑ましい、なんともかわいらしい絵本です。

ちいさなどんぐりぼうやのオッケとピレリルが、かしわの葉っぱの飛行機に乗って飛んでって、アクシデントがあって帰れなくなり、迎えがきて帰ってくる。

たったそれだけのお話ですが、秋の森ののどかさ、おおらかさ、かわいらしいユーモアに溢れていて、ゆったりとした気分になります。

 

登場人物(妖精?動物)は、みんな屈託なく邪気がなく、素朴で裏がありません。

洗濯ばあさんや、トロルは怒るけど、陰湿さや小賢しさはなく、ただその瞬間怒ってるだけ。お母さんも、やっと帰ってきた子どもたちが、すでにスバンス氏からしこたま叱られたと知ると、もうそれ以上叱ることなく、いろんな思いをして帰ってきた子どもたちを暖かく迎えいれます。

 

のびやかで明るくて、安定していて健康的な心地よさ。

のどかな森の雰囲気が、読んでいる子どもたちを安心感で包みます。

 

かしわの葉の飛行機やいかだ。

マロニエの実の殻で作ったエレベーター。

りすの背に乗ってぴょんぴょん飛んだり。

子ども心をくすぐる楽しさもいっぱいです。

どんぐりの帽子が蓋になったティーポット。

お母さんのエプロンがかしわの葉っぱだったり、蜘蛛の糸が電話になっていたり・・・etc。細部の小道具にもかわいらしいユーモアがあって見ていて飽きません。

洗濯ばあさんたちの洗濯物が、「小人のひげ」というのも、笑えてしまいます。

「小人のひげ」って、外して洗うものだったんだww。

 

透明感のある水彩の絵も清々しく、深まりゆく秋のこげ茶や木の葉色に、小人たちの赤い帽子などが映えて美しく、色味でも楽しさが伝わってきます。

楽しさいっぱい。自然の恵みを体で感じ、楽しむ心地よさ。

森の中をのぞくと、本当にこんなどんぐりぼうやや小人の世界がありそうな気分になってくる、素敵に愛らしい絵本です。

 

のどかな秋の陽だまりで読んでみたい、かわいい絵本だなと思いました。

 

今回ご紹介した絵本は『どんぐりぼうやのぼうけん』

エルサ・べスコフ作・絵 石井登志子訳

1997.10.13  童話館出版  でした。

どんぐりぼうやのぼうけん

エルサ・ベスコフ/石井登志子 童話館出版 2018年10月
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