絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『ずどんといっぱつ』

黄金に輝く人生の道

苦しい環境の中から、自分で人生を切り開いていくたくましい雌犬のお話。 

            

 あらすじ

シンプは醜い雌の子犬です。兄弟はみんな貰われたのに、シンプだけは貰い手がなく、 ゴミ捨て場に捨てられてしまいました。シンプはペコペコのお腹を抱えて、行き場なくあちこちをさまよいます。ゴミ捨て場ではネズミに、ゴミ缶置き場ではネコに追い立てられ、とうとう野犬狩りの男に捕まり野犬収容所へ。真っ黒でデブのシンプは、貰い手の見つかるあてもなく・・・この先どうなるのやら・・・。

 

怖くなったシンプは、野犬収容所を抜け出して走ります。走りに走ったシンプは、町はずれのサーカス着き、ピエロのおじさんに出会います。ピエロのおじさんは優しく、シンプに食べ物をくれたり、ベッドに入れてくれたりしました。

 

でも、このピエロのおじさん、団長さんから今夜のショーでおもしろい芸を見せないと首だ、と言われているのです。

 

その時、シンプはいいことを思いつきます。自分がゴムボールの代わりになって、ピエロのおじさんの撃つ大砲から、ずどん!」と出ようというのです。

 

この計画は大成功!!お客さんは拍手喝采、大喜び。団長さんもシンプとピエロのおじさんの曲芸は、サーカス始まって以来の出来栄えだと褒めてくれました。

 

それから、シンプはピエロのおじさんと一緒に、サーカスで各地を旅してまわり、「たいほうだまの シンプ」として有名になったということです。

                     

読んでみて…

行き所のない独りぼっちのシンプが、ピエロのおじさんに拾われ、ピエロのおじさんに恩返しする形で大成功!自分も、優しくしてくれたピエロのおじさんも安泰の場を見つけ、幸せに暮らしていく。苦しい環境の中から、自分で生きる道を切り開いていくシンプに、たくましさを感じます。

 

絵は、絵本にしてはやや画面が暗く、シンプはほぼ黒い塊のようです。醜い子犬という設定どおり、お世辞にも可愛くは描かれていません。ゴミ捨て場では、まるでゴミと一体化しているようです。表情も、黒い姿に小さな白い眼だけがうつろに開いている、なんとも情けない哀れなさまを見せています。

 

でも、そんなシンプの表情が、サーカスに来てから一変します。ピエロのおじさんにサーカスを案内してもらっているシンプの目は、黒にただ小さな白い点という、これまでと同じであるのに関わらず、とても明るく生き生きとして見えます。大砲玉になろうとして、大砲をのぞき込んでいるシンプのいたずらな表情は、とても可愛くてユーモラスです。

 

自分の居場所を見つけるということ、誰かから受け入れられ、認められる喜びというものを感じさせてくれます。それも、シンプは自分でこの喜びの道を切り開いたのですから。この本を読む子どもたちにも、きっと人生の希望を見せてくれるのではないでしょうか。

 

先ほど、この絵本は画面が絵本にしてはやや暗いと書きましたが、この暗さは陰鬱な暗さではなく、重層的な深みのある暗さ、色の積み重ねでこっくりとした深みがでていて、人生の道を切り開いていくという大事なテーマを、伝えるに足る深さをこの絵本に与えているように思います。でも、重々しくなりすぎていないのは、線自体が無駄がなくすっきりとしているからでしょうか。全体としてはモダンな、絵画としても素敵な仕上がりになっていると思います。

 

お話の中盤、シンプが自分の居場所となるサーカスを見つける場面では、サーカスへの道が黄金に輝いています。黄金に輝く人生の道を、この本を読む子どもたちが、それぞれ見つけてくれますように。

 

なお、この絵本はかつては『たいほうだまシンプ』(おおかわ ひろこ訳 ほるぷ出版 1978)というタイトルで、出版されていました。『たいほうだまシンプ』の方は、現在絶版ですが、図書館などでは見ることができます。『ずどんといっぱつ』よりもう少し画面が暗くなっています。

 

 今回ご紹介した絵本は『ずどんといっぱつ』

ジョン・バーニンガム文・絵  渡辺茂男

1995  童話館出版  でした。

ずどんといっぱつ

ジョン・バーニンガム/渡辺茂男 童話館出版 1995年03月
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