絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『あおい目のこねこ』

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うらやましいほどのたくましさ、屈託のなさ。

しなやかな心、自己肯定感を育める絵本です。

            

読み聞かせ目安 中学年 10分

あらすじ

お腹をすかせたあおい目のこねこが、ねずみの国を探しに出かけます。

途中で、魚や暗闇に光る眼玉、はりねずみに出会いますが、ねずみの国がどこにあるかはわかりません。食べられたものは、蠅や蚊や油虫だけ。それでもこねこは「なーに、なんでもないさ」と先に進みます。

 

次に出会ったのは、五匹のきいろい目のねこたち。このねこたちもねずみの国を探しにきたのですが、見つからなかったということで、あおい目のこねこは、そこできいろい目のねこたちと暮らすことにします。

 

でも・・・、きいろい目のねこたちは、あおい目のねこをばかにして、仲間にしてくれません。

 

それでもこねこは、自分の顔を水に映して、青い目はきれいで、へんてこじゃないと知ると、嬉しくなってきいろい目のねこたちのところへ戻ります。

 

すると・・・、きいろい目のねこたちは、大きないぬに追い立てられ、木の上で怯えているではありませんか。

 

あおい目のこねこが、寝そべって救済案を練っていると、いぬに「わん!」と吠えたてられ、びっくりして飛び上がり、思わずいぬの背に飛び降りてしまい、これまたびっくりしたいぬが、こねこを乗せたまま走り出します。

 

いぬは夢中で走り、いくつもの山を登り下り、登り下り・・・。そうして着いたところが、なんと!ねずみの国だったのです!!

 

こねこはねずみをいっぱい食べてまるまる太り、きいろい目のねこたちのもとへ帰ります。帰ってみると、きいろい目のねこたちはまだ木の上で、ひょろひょろに痩せていました。

 

あおい目のこねこは、きいろい目のねこたちをねずみの国へと連れていき、みんなでねずみをたくさん食べて、まるまると太っていきました。

 

もうあおい目のこねこは、仲間はずれにはされません。青い目もとってもすてきできれいだと言われるようになりました。

                     

読んでみて…

あおい目のこねこの、元気の良さ、屈託のなさ、折れない心に感心します。

どんなにお腹をすかせても、誰にも相手にされなくても、

 

「なーに、こんなこと、なんでもないや」

「おもしろいことをしてみよう。なんにもなくても、げんきでいなくちゃいけないもの」

 

と、あっけらかんと言えるたくましさ。うらやましくなってきます。

 

子どもたちは(大人もですが)、学校や家庭、その他いろいろなところで、上手くいかないこと、仲間はずれにされてしまうこと、いろいろなコンプレックスを抱かずにはいられない場面などに遭遇します。特に中学年。自我が強くなり、自他の意識も強まり、お友達とぶつかることも次第に増えてくる時期の子どもたちに、この本を読んであげたくなります。

 

本を読んだところで、子どもたちを取り巻く問題は簡単には解決できません。でも、こういった本を読むことで、少しでも心の支えに、拠り所にしてもらえたらいいなと思うのです。

 

あおい目のこねこの、

「なーに、こんなこと、なんでもないや」

「なんにもなくても、げんきでいなくちゃいけないもの」

と言える、このたくましさ、自己肯定感はどこからくるのでしょう。

 

本を読むことは、直接すぐに何かに役立つわけではありません。お腹がいっぱいになったり、痛いところが治ったりといった、すぐにわかる、目に見える効果があるわけではありません。でも、子どもたちの心をたくましく育てる土壌を、自己肯定感を育む土壌を耕す一助には絶対なれると信じて、子どもとちに文学を手渡す仕事をしていきたいといつも思っています。

 

さて、話がなだかちょっと重くなってしまいましたが、この絵本は決して重いものではなく、実にあっけらかんと、軽やかにお話が進んでいく絵本です。

 

画面は、白地に黒の筆描きをベースに、青い目と黄色い目が光るという、とてもすっきりした絵になっています。絵本にしては100ページを超える厚いものなのですが、左ページは4~5行の文、右ページは絵のみとなっていて、お話もテンポが良くぐんぐん進むので重さを感じません。

 

絵も、それぞれのページでこねこの表情がとても豊かで可愛らしく、こねこの屈託のないたくましい性格がよく表されています。

 

また、暗闇は黒一色だったり、黒に光る目玉だけだったり、各ページに楽しい工夫がしてあり、あきさせません。きいろい目のねこが、木の上でひょろひょろに痩せている場面なんて、木にボロ布が引っかかっているようで、笑えてしまいます。さらに、いぬがこねこを背に乗せて走る場面は、山を登ったり下ったりが見開き6ページにわたってくねくねと続いていくので、子どもたちは「えー!」「またー!!」「えー!」「まだー!!」と面白がります。

 

加えて、この絵本は場面展開が1の巻、2の巻、3の巻・・・と順を付けていくので、子どもにはそれが面白いらしく、読み進めていくうちに、聞いている子どもが場面の進行に合わせて、合いの手を付けるように、「4の巻!」「5の巻!」「6の巻!」といった具合に、声を掛けてきたりすることもあって、読み聞かせをしながらとても楽しい気分になってきます。

 

『あおい目のこねこ』を読んだ子どもたち(大人も)が、困難にぶつかったとき、この本の面白さとともに、「なーに、こんなこと、なんでもないや」というあおい目のこねこの言葉を思い出し、乗り越える助けとしていってくれたらいいなあと思います。

 

 今回ご紹介した絵本は『あおい目のこねこ』

エゴン・マチ―セン作  瀬田貞二

1965.4.1  福音館書店  でした。

あおい目のこねこ

エゴン・マチーセン/せたていじ 株式会社 福音館書店 1965年04月03日頃
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