絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『りすのナトキンのおはなし』

生意気なこりすのお話

ビクトリアス・ポター3作目の絵本です。

            

読み聞かせ目安  中学年  10分

あらすじ

りすのナトキンは、お兄さんや大勢のいとこたちと、湖のそばの森に住んでいました。

湖の真ん中には、たくさんの木の実がなる島があり、木々の真ん中にはブラウンじいさまというふくろうの住む、かしわの木が立っていました。

 

木の実が熟し葉が黄色になってくると、りすたちはふくろう島へ、木の実を取りにでかけます。

りすたちは必ず、ふくろうじいさまにお土産を持って行って、島の木の実を取る許しを請うのでした。

太ったねずみだの、もぐらだの、小魚だの・・・。毎度いろんなお土産を持って行きました。

 

けれども・・・ナトキンだけは手ぶらで!それも毎度毎度、

 

「なぞかけた なぞかけた!

あかいふくきた 小さいおとこ!

つえを手にして のどには小石。

このなぞとけたら 1えん しんじょ!」

 

と、ブラウンじいさまをからかうように、なぞかけ歌を歌ってふざけるのです!

ブラウンじいさまは、いつも知らん顔。目をつぶって、ナトキンなど相手にしませんでした。

 

でも・・・りすたちが島に渡りはじめた6日目のこと。

 

「ブラウンじいさま ブラウンじい!

おうさまのごてんの 入りぐちで、

きんきら、きらきら、きんきらりん。

おうさまのうまが みんなでかかり、

おうさまのけらいが みんなでかかり、

それでも きんきらきんを、おいだせぬ」

 

ナトキンが、無作法に歌って飛んだり跳ねたりしていると・・・

突然、パタパタという音がして、バタバタという音がして、

 

「きぃー!」

 

ナトキンは、ブラウンじいさまに捕まって、皮を剝がされそうになりました!

力いっぱい暴れたナトキンは、しっぽがぷっつり切れてしまいました。

                      

読んでみて・・・

ピーターラビットの絵本」第4集10冊目の絵本。ポターの製作年は1903年。3作目の絵本になります。

 

このお話もまた、かつて作者ビクトリアス・ポターの家庭教師であった、アニー・ムーアの子どもたちに宛てた手紙が元になったお話で、りすのナトキンも、湖水地方にいた生意気なりすが、モデルになっているのだそうです。

 

りすたちは、木の実が熟するようになると、湖を渡って島へやっていきます。

りすが湖を渡る。・・・どうやって渡るのかというと、小枝で作った筏に乗り、しっぽを広げて帆の代わりにして渡っていくのですが、これもまた、湖水地方のケジック島に住んでいるご婦人から聞いた、アメリカのリスたちのお話が元になっているのだそうです。

 

ナトキンのお兄さん、トインクルベリはじめたくさんのいとこたちは、美味しそうなお土産をふくろうじいさまに持って行くけれど、ナトキンだけは、いつも手ぶらでおふざけばかり。

お話は、このナトキンのおふざけのなぞかけ歌を中心に、進んでいきます。

前作の『グロースターの仕立て屋』(ビクトリアス・ポター作・絵 石井桃子訳 1974.2.28 福音館書店)でも、わらべ歌がいくつも挿入されていて、それが冗長だと編集者からかなり削られてしまっていたそうなのですが、

masapn.hatenablog.com

今作でポターは、それを超えるべく⁉わらべ歌を中心に、お話を展開させる挑戦をしてみたようなのです。

わらべ歌が毎度あり、何度も繰り返しのあるお話ですが、今回は冗長にならなかったのは、なんといっても主人公ナトキンの魅力でしょう。

 

お調子者のナトキンは、まさにふざけるのが大好きな子どもそのもの!

後先省みず、空気も読まずに好き放題‼

表紙絵のナトキンは、きかん気の強そうな顔をして、体をくねらせ跳びあがっています。とっても魅力的な姿ですが、この表紙絵のナトキンと、よく似たポーズのナトキンがもう1枚。ブラウンじいさまの堪忍袋の緒が切れて、とうとう捕まってしまう直前の、お調子者が最高潮に達したときの、歌い踊るナトキン。よく似たポーズながらも「おや⁉ちょっとヤバいかも⁉」と、事態を微妙に察した気配があって、こちらも愉快で魅力的です。

 

大きな懐でリスたちを迎えてくれる、いつも冷静沈着なブラウンじいさまも、よく見るととても優しそうな顔をしていて、そして時にとてもチャーミングです。

りすたちが、ハチミツをお土産に持っていったときのこと。ナトキンの行儀の悪さにうんざりしながら、じいさまは実に行儀よく、丁寧に小皿に取り分けたミツをスプーンですくって食べています。

ふくろうって、手があったっけ⁉

足は椅子の上にあります。羽の下から手が出ているよ⁇

実際のふくろうの生態とは違いますが、それでも不自然に見えず、ユーモアをもって自然に⁉見えるのは、ポターならではの力量というところでしょうか。

 

りすのお兄さんやいとこたちも、みな愛らしく、ふわふわした毛に触ってみたくなるかわいらしい絵本です。

 

今回ご紹介した絵本は『りすのナトキンのおはなし』

ビクトリアス・ポター作・絵 石井桃子

1973.1.20  福音館書店  でした。

りすのナトキンのおはなし新装版

ビアトリクス・ポター/石井桃子 福音館書店 2002年09月
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参考文献

『ビクトリアス・ポターの生涯ーピーターラビットを生んだ魔法の歳月ー』

マーガレット・レイン 猪熊葉子訳 1986.10.15 福音館書店

 

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