絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

読み聞かせのすゝめ その3

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読み聞かせの効能

 

「読み聞かせってなあに?」

「ただ本を読んで聞かせるだけ?」

「まだ字が読めない小さい子にするものでしょう。」

「大きな子にはもう必要ないもの」

「ひとり読みの前段階のもの」

などなど、読み聞かせについて、いろいろな疑問や意見があると思います。

今回は、読み聞かせの効能について、特にひとり読みとの違い、読み聞かせならではの良さについてお話しようと思います。

 

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いろいろな本やお話との出会い

読み聞かせの時間に、いろいろな大人からいろいろな本を読んでもらうことで、家にはない本、今まで読んだことのない本、自分では選ばないような本やお話に出会うことができます。

小中学校の図書ボランティアや、地域の図書館などのお話会では、男女を問わずさまざまな年代の方が、読み聞かせをしています。学校での読み聞かせは、学校によっては本を指定されることもあるかもしれませんが、基本的には読み手それぞれが選んでいるようです。

核家族化が進んだ今、いろいろなタイプの大人が選ぶ多種多様な本との出会いは、子どもにとって、とても貴重な出会いになります。自分や自分の家族では選ばないような、思いがけない本を読んでもらえることも!

子どもたちの視野を広げる、とてもよい機会をつくることができます。

 

読書への興味・意欲を高める

 「本って面白い!」と思える経験をとおして、本に対する興味や読書に対する意欲を高めることができます。

読書には、労力がいります。じっと集中して、文字や絵を追っていく作業は、読書なれしていない子どもには、たいへんな忍耐がいる仕事です。現代は、ゲームやテレビ、ネット動画など、労なくして簡単に楽しめるものが、子どもたちのまわりにいっぱいあふれています。そんななかで、子どもたちに本に興味を持ってもらうには、まずは読み聞かせをして、「本って面白い!」という経験をつんでもらうことが、とてもよいきっかけになると思います。

読書離れ、本離れがいわれて久しい今、まずは興味を持ってもらうこと。面白いと思って、自分で読んでみようと思うきっかけづくりに、ぜひ読み聞かせを活用してもらいたいと思います。

 

仲間との物語の共有

教室や図書館などで、読み聞かせをしてもらうことで、その場にいる仲間たちと、同じ物語を味わい共有することができます。仲間と、楽しさ面白さ、喜びやときに悲しみを共有することは、同じ感情を味わうということで、連帯感がうまれます。またそれは、仲間同士の感情を推し量る心を養うことにもつながります。

また、同じ物語を共有することは、その場で、その場にいる読み手聞き手みんなで、物語空間を創造する、立ち上げるという、文学的行為を行うことにもなっていきます。

 

「耳からの物語体験」をする

 読み聞かせをするとき、読み手は本に書いてある文字を、一文字一文字決してもらさず丁寧に読んでいきます。何度も練習して、聞き手にわかりやすいように、お話がよく伝わるように、心をこめて読みます。

ひとり読みをしていると、つい先が気になって走り読みしたり、絵本の場合は、どうしてもぜったい、文字か絵かどちらか一方を先にしか見ることができません。お話の内容と絵を、同時に頭に入れることはできないのです。

でも、読み聞かせで人に読んでもらえば、聞き手はお話と絵を同時進行で味わうことができます。それも、ゆっくりゆったりと。

読み聞かせでは、ゆっくりお話を聞き、絵を見て、ゆっくりと流れる時間のなかで、描かれていない部分を想像したり、感嘆の声をもらしたりする、心に余裕のある読書ができるのです。

 

また読み聞かせでは、読み手がお話がよく伝わるように、自分の心を動かしながら読むことを心がけて読みます。そのため、特に読書なれしていない子どもや、お話がよくつかめない子どもには、ひとり読みのときより、物語がつかみやすくなるという利点があります。

また、同じ読み聞かせにの場に、聞き上手な子どもがいれば、その子どもの心の動きが周りに伝わり、周りの子どももうまくお話を聞けるようになってくる、という効果もうまれてきます。そして読み手もまた、そんな子どもたちの反応を感じながら読んでいくので、本をとおして、読み手も聞き手もいっしょに心を動かしながら読んでいくという現象までうまれてくるのです。このことを脇明子は『物語が生きる力を育てる』(2008.1.29 岩波書店)のなかで「共鳴現象」と呼び、物語を読んでもらって聞くことを、「耳からの物語体験」として、読書における重要な意味のある行為と評価しています。

 

物語が生きる力を育てる

脇明子 岩波書店 2008年01月
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こういった「耳からの物語体験」や、その場でうまれる「共鳴現象」は、ひとり読みでは経験することはできません。読み聞かせは、まだ文字の読めない小さな子どもにするものとだけ思われがちですが、文字が読めるようになった子にも、高学年の子どもたちにもぜひと勧めるのは、こういった訳があるのです。

 

 

もちろんひとり読みの読書も大切です。読書は本来、きわめて個人的な営みである部分が大きいものですが、集団であるからこそ味わえる読書というものもあり、それがひとり読みを進めていくための支えにもなっていくので、ぜひぜひ読み聞かせを、小さな子どもにも大きな子どもにも、たくさんしてあげていって欲しいなと思います。

いろいろな本やお話との会い、読書への興味・意欲を高め、仲間との物語の共有や「耳からの物語体験」をするということができる読み聞かせ。子どもたちの育ちにとって、とても良い影響を与えてくれるものだと確信しています。

 

次回は、今回の「読み聞かせの効能」をもう少し掘り下げて、「声の文化」としての読み聞かせ、という視点からお話してみようかと思います。

 

 

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