絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『はらぺこあおむし』

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しかけの楽しい絵本

 絵の美しさ、お話の変化、楽しいしかけの3拍子がそろった絵本です。

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 読み聞かせ目安  低学年  2分

あらすじ

 ちっちゃな卵からかえったあおむしは、食べ物を探しにでかけます。

月曜日にはりんごをひとつ、火曜日にはなしをふたつ、水曜日にはすももをみっつ。

それでもお腹をすかせていたあおむしは、木曜日にいちごをよっつ、金曜日にオレンジをいつつ、土曜日にはなんとチョコレートケーキやアイスクリーム、チーズにサラミetc・・・なんと10種類もの食べ物を食べて・・・お腹が痛くなりました。

日曜日、あおむしは葉っぱを食べました。おいしいおいしい葉っぱでした。

お腹もすっかりよくなって、はらぺこでちっぽけだったあおむしも、すっかり大きく太って、まもなくさなぎになります。

そして最後は・・・。

きれいなちょうになりました!

 

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  読んでみて・・・

  エリック・カールによる、美しく楽しいしかけ絵本です。

お子さんのファーストブックに選ばれるご家庭も、多いのではないでしょうか。我が家もそうでした。小さい子どもから大人まで楽しめる絵本です。

 

よく知られた絵本で、赤ちゃんのころから親しむ子も多い絵本ですが、読み聞かせの場でもおすすめの絵本です。特に、入学したての1年生の、はじめての読み聞かせに向いていると思います。

 

「それ、しってる~。」

この絵本を持って行くと、教室のあちこちから、こう声が聞こえます。

子どもには、知っているお話に出会いたがっているところがあって、知っている本でもとても喜ぶところがあります。

大人はついつい、知らないお話を、新しい刺激を、あたえなければ意味がないように考えがちです。それはそれで大切ですが、子どもには、知っているお話を聞くこと、知っている絵本を見ることで、自分の中にあるお話や知識を再確認し、反芻して味わうことも重要で、それが自己肯定感を養っていくことにつなっがていきます。

 

はじめての学校生活、はじめての先生にお友達、保護者の送り迎えなしで自力で通う通学路、はじめてづくしで緊張している1年生の子どもたちは、読み聞かせもはじめてで、緊張するもの。でもそこで、知っているお話に出会えると、ちょっとほっとしながら充足感が味わえて、安心できる楽しいときが過ごせます。読み聞かせ(ひいては読書)が、安心できて楽しいものだという印象を持たせることもできるので、最初の読み聞かせの導入に、なじみのある絵本を持っていくのはおすすめです。

 

それにこの絵本は、構えて読むところがひとつもない。とてもシンプルな作りというものいいところ。

土曜の夜に葉っぱの上にあった卵が、日曜の朝に孵りあおむしとなり、月、火、水、木、金曜と、日を追うごとに、違う食べ物を一口ずつ増やしながら食べ、またやってきた土曜日に、いろんな食べ物を食べすぎて・・・また日曜日。本来のあおむしの食べ物である葉っぱを食べて持ち直し、さなぎから蝶へ。

あおむしの成長過程が、まっすぐに語られていきます。

 

でも、そのなかで朝と夜が繰り返しやってくること、月、火、水・・・と曜日がめぐるという、自然の循環やリズムのしくみをしっかり教えてくれます。

 

最初の土曜日の夜の景色は、深く重層的な藍色の夜空に、青白く輝くお月さま。月の光が、あおむしの卵をぽっと白く照らしています。

ページをめくると、ぱっと輝くお日様が、右画面からはみ出るほど顔をだす明るい朝!

小さな緑のあおむしが、ちょこちょこ地面を歩いています。

ひっそりとした夜の静けさと、あおむしが動き出す活気ある朝の対比が、とても印象的です。

 

絵は、エリック・カールお得意の、彩色した色紙を切り張りしてつくったコラージュによるもの。

白地にカラフルな色紙がとても鮮やかに映ります。

鮮やかな色紙で形作られた、さまざまな食べ物のおいしそうなこと!

めぐってきた土曜日に、あおむしが食べた食べ物がずらりと並んでいるページは、まるでデパ地下のショーケースように魅力的です!

 

そして、なんといっても楽しいのは、あおむしが食べたあとをあらわした小さな穴!!

子どもの小さな指が入りそうな大きさの穴が、ぽつぽつとそれぞれの食べ物に、ひとつづつ空いています。

 

いわゆるしかけ絵本ですが、しかけがおおげさ過ぎないのもいいところ。

しかけ絵本は数ありますが、「しかけのため」のしかけ絵本になってしまっていて、絵本というより、ほとんどおもちゃといってもいいものも多くあるなか、この絵本のしかけは、お話の流れや変化にそっていてとても自然です。

1、2、3・・・と増えていく穴は、数の概念も養えます。

 

色鮮やかでおいしそうな食べ物を食べ、いっぱい穴が空き、ゆかいにお話はすすみますが、お腹をこわしたあおむしが、最後に行きついた緑の葉っぱの美しいこと!

明るく生き生きした緑が、本来のあおむしの食べるべき食べ物としての正当性を、堂々とまっとうに主張しています。

 

そして、最後のあおむしの大変化!

まるまる立派に太ったあおむしが、茶色いさなぎとなり、そしてなんともあでやかな蝶に!!

見開き画面いっぱいに、鮮やかな羽を広げている姿の美しさ!!

 

絵の美しさとお話の変化、しかけの楽しさが一体となった、とてもすぐれた絵本です。

 

はらぺこあおむし

エリック・カール/森比左志 偕成社 2006年10月
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穴が空いているので、どうしても子どもは、穴に指を突っ込みたくなるもの。

穴の破れが心配な方には、小型になってしまいますが、厚紙製のボードブックもあります。小型なので、絵の迫力はやや弱まってしまいますが、持ち運びや、小さなお子さんが手にするのには向いていて、用途によってはこちらもおすすめです。

 

ボードブック はらぺこあおむし

エリック・カール/もり ひさし 偕成社 2012年12月
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他には、ぬいぐるみもセットになったものもあって、こちらは贈り物などにもおすすめです。

はらぺこあおむし+ぬいぐるみギフトセット

エリック・カール 偕成社 2015年04月21日
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今回ご紹介した絵本は、『はらぺこあおむし

エリック・カール作 もりひさし訳

1976.5 偕成社  でした。

 

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