絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『ちいさなふるいじどうしゃ』

*当ブログではアフェリエイト広告を利用しています。

自業自得!? 

 痛烈な中にも暖かさを感じさせるお話。

ちいさなふるいじどうしゃ

新品価格
¥1,320から
(2020/1/6 14:12時点)

 読み聞かせ目安  低学年  10分

 

あらすじ

 

あるところに、ちいさなふるいじどうしゃがありました。

 

運転手さんが、丘にちいさなふるいじどうしゃを止め、

 

「ここで まっていてくれよ、じどうしゃくん。この おひゃくしょうさんのうちで、きみに みずを もらってくるからね」

 

といっていってしまうと、ちいさなふるいじどうしゃは

 

「いやだ!じっとしているのなんか いやだ!そんなことは おことわりだ。まってなんか やるもんか!」

 

といって、丘を駆け下りていきました。

 

まもなくちいさなふるいじどうしゃは、一匹のかえるに会いました。

かえるは、

 

「ああ、おねがいだよ、じどうしゃくん」

「まっててよ、すぐに きみのとおりみちを どくからさ!」

 

といいましたが、ちいさなふるいじどうしゃは

 

「いやだ!」

「ぼくは いやだ!そんなことは おことわりだ。まっててなんか やるもんか!」

 

といって、かえるを跳ね飛ばしていってしまいました。

 

それからちいさなふるいじどうしゃは、道々、うさぎ、あひる、めんどり、うし、お百姓のおばさんに会いました。

 

みんな口々に、ちいさなふるいじどうしゃのために道を空けるから待って、といいましたが、ちいさなふるいじどうしゃは、「いやだ!」といって、みんなを次々に跳ね飛ばしていきました。

 

そのあとちいさなふるいじどうしゃは、大きな黒い機関車に会いました。

 

機関車も、すぐに道を渡ってしまうから待ってといいましたが、ちいさなふるいじどうしゃは、やっぱり「いやだ!」といって、線路の真ん中に突っ込んでいきました。

 

すると・・・

 

ぼっかーん!がっしゃーん!

 

ちいさなふるいじどうしゃは、空中に跳ね飛ばされ、ばらばらになってしまいました!!

 

機関士のおじさんは汽車を止めました。ちいさなふるいじどうしゃが跳ね飛ばしてきた動物たちやお百姓のおばさん、ちいさなふるいじどうしゃの運転手さんもやってきました。

 

運転手さんは、

 

「この きかんぼの、ちいさなふるいじどうしゃめ!」

「こいつは、したくないことは ぜったい しなかった。もう おそい。こいつのために してやれることは、もう なんにも ない。」

 

といって、ばらばらになったちいさなふるいじどうしゃの部品を、お百姓のおばさんに全部あげました。

 

お百姓さんは、ちいさなふるいじどうしゃの部品を家へ持って帰り、農場の動物たちに分けてやりました。

 

動物たちは、ちいさなふるいじどうしゃの部品を、自分たち遊び場や住まいに使い、お百姓さんはブランコやベンチにして使いました。

 

 

MUJIBOOKS(無印良品)推奨のフォトブック『BON』

 

 

読んでみて…

 

茶色の表紙に太目の黒い線で、ちいさなふるいじどうしゃと運転手さん、お百姓のおばさんに動物たち。真ん中には大きく踏切が、それぞれ白抜きで描かれています。

 

表紙を開くと、折れた踏切にばらばらに壊れた自動車の部品や、 跳ね飛んだおばさんや動物たち!これは何事!!といった様子が広がっています。

 

お話を読み進めていくと、この見返しの意味するところがしだいにわかってきます。

 

きかんぼうのちいさなふるいじどうしゃが、次々に会うもの会うものを飛び散らし、ついには自分が飛び散らされ・・・。

 

お話のはじめは、「あるとき、あるところに、ちいさな ふるい じどうしゃが ありました。」と始まるので、子どもたちは昔話を聞くかのような感じで、ちいさなふるいじどうしゃに寄り添って、お話に入っていくと思います。

 

ところが、お話が進んでいくと・・・

 

「あれー?」

「いけないんだー!」

 

わがまま勝手なちいさなふるいじどうしゃを、非難する声に変わっていきます。

 

誰でも、自分の感情が抑えきれなくて、突っ走ってしまう時があるでしょう。

わがまま勝手ばかりして、ちいさなふるいじどうしゃのように、人に迷惑をかけてしまうこともあるかもしれません。

 

この絵本は、そんな自分勝手な姿を、子どもたちに客観視させてくれる絵本なのだと思います。

 

この絵本では、最後はちいさなふるいじどうしゃが、機関車にぶつかってばらばらになり、ばらばらのまま元に戻されることなく終わっています。

なかなか痛烈な終わり方です。

 

この絵本を読んだとき、一番前に座っていた女の子が、

 

「じごうじとく」

 

と、ぽつりといいました。

ちいさな子がよくそんな言葉知ってるなと感心しつつ、けれども、その場に漂う空気が、決して冷めたものではない、あっけらかんとして、かつのどかなものであることに気づきました。

 

この絵本では、ちいさなふるいじどうしゃは、ばらばらになってしまいますが、そのあとお百姓さんのはからいで、動物たちの住まいになったり、遊び場になったり、ちいさなふるいじどうしゃが、迷惑をかけてきた人たちに喜んで迎えられるようになっています。

 

ちいさなふるいじどうしゃの部品が、ばらばらのままそれぞれの場所で使われている様子が描かれているページは、見開きいっぱいに広々とお百姓さんの農場が広がり、のどかにゆったりとした雰囲気が漂っています。

 

白と黒だけで描かれたページですが、表紙見返しに折り込まれた表紙の地色の茶が、まるで額縁のように画面を囲み、落ち着きと暖かさを与えています。

表紙の地色は、表紙だけでなく、本全体の構成にも影響を与えるんだなと気づかされます。

 

お話のちいさなふるいじどうしゃは、わがままで自分勝手に暴走しますが、この絵本では、それをばらばらにして罰するのではなく、そういった勝手な気持ちを客観的に見守る目を、暖かく包み込むようにしながら、養ってくれているのではないかと感じます。

 

ちいさなふるいじどうしゃは、きかんぼうですが、お百姓のおばさんはじめ、かえるやうさぎ、うしやあひるといった動物たちは、みなのんびりと柔らかい表情をしています。

 

きかんぼうの子を、突き放すのではなく暖かく受け入れる、そんな姿勢を感じさせてくれる絵本になっているのだと思いました。

 

子どもが感情を抑えきれなくなっているときなどに、読み聞かせてあげるといいかもしれませんね。

 

 

ランキングに参加しています。ポチっとしていただけると嬉しいです。

いつもありがとうございます。


絵本ランキング

にほんブログ村 本ブログ 絵本・児童書へ
にほんブログ村

 今回ご紹介した絵本は『ちいさなふるいじどうしゃ』

マリー・ホール・エッソ作 田辺五十鈴訳

1976.1.25 冨山房  でした。

 

 

サイバーエージェントが運営する 小学生向けプログラミング教室【テックキッズスクール】

 

このブログに掲載している著作物の書影・書誌データ等は、版元ドットコム・各出版社ホームページ・個別の問い合わせ等を経て、使用の許諾を確認しています。