難破船荒らしがやってきた!
『チムとゆうかんなせんちょうさん』シリーズのうちの1冊。
読み聞かせ目安 中学年 15分
あらすじ
海辺の家に住むチムと、お友達のシャーロットとジンジャーは、毎日浜辺で遊んでいました。
天気の良い日は、よく灯台へ行って遊びました。
灯台守と相棒のアーニーは、みんなの友達です。
シャーロットは、アーニーのことが大好きでした。
チムはいつも、寝る前に窓から灯台の光を見ていました。
ところがある晩のこと。
灯台は、いつになっても灯がつきません!
その晩は、激しい嵐でした。
灯台の灯がなければ、海をゆく船は難破してしまいます。
チムは、仲良しのマクフィー船長の所へ急ぎました。
(後からは、こっそりジンジャーとシャーロットも付いてきていました。)
チムと船長は、ボートで灯台へ向かいます。(ジンジャーとシャーロットもこっそりボートに乗り込んでいました。)
暗く荒れる海を渡り、灯台についてみると、なんと灯台は、難破船荒らしに襲われ、灯台守もアーニーも、頭を殴られ、気を失って倒れていました!
船長とシャーロットは、灯台守とアーニーを介抱し、チムは急いで灯台の灯を付け、ジンジャーはボートに戻り、沿岸警備隊を呼びにいきました。
するとそこへ、また難破船荒らしたちが、灯台の灯を消しに戻ってきました‼
チムは必死で灯を守ります!
脅されて怖かったけど、勇敢に立ち向かいました。
すると、階段の下から、大勢の足音が!
沿岸警備隊が、駆け込んできてくれました‼
難破船荒らしは御用となり、灯台守たちは救助され、みんな無事に家に帰ることができました。
翌日、勇敢なチムとジンジャーとシャーロットと船長さんは、街中の有名人になっていました。
灯台守とアーニーと、闘って負傷した船長さんは、しばらく入院しましたが、じきによくなりました。
シャーロットは、かいがいしく毎日アーニーのもとへお見舞いに。
でも・・・。アーニーの恋人が来ているときは、ちょっぴり寂しい気持ちになりました。
読んでみて・・・
以前ご紹介した『チムとゆうかんなせんちょうさん』シリーズの絵本です。
『チムとシャーロット』以来、チムと暮らすことになったシャーロットと、ジンジャーもいっしょに大活躍!またもやすごい大冒険です。なにしろ「難破船荒らし」という悪党どもを捕まえてしまうのですから。
「難破船荒らし」とは、船を灯台とは別の灯に誘って難破させ、その船の金品を強奪する荒くれもの。
ある嵐の夜。いつも寝る前に灯台の灯を見ては、この灯を頼りに航海する船を想像して楽しんでいたチムは、灯台に灯がついていないことにいちはやく気づきます。
小さな男の子が、嵐をおかして出かけていき、老船長といっしょとはいえ、ボートに乗って海へ出て、さらには難破船荒らしを捕まえるなんてすごいこと。ハラハラドキドキの大活劇です。
的確な判断でマクフィー船長の元へ行き、船長の指示のもと、荒れ狂う海の中、ボートを操縦し、灯台に着くや、倒れた灯台守やアーニーを救助し、大切な灯台の灯をともします。恐れずひるまず、テキパキと行動する勇敢な少年です。
勇敢さは、戻ってきた難破船荒らしたちを前にしても変わりません。
絶対に灯台の灯を消させまいと、立ち向かいます。
いつもは家仕事が大好きで、とても女の子らしく優しいシャーロットも、びっくりするほど勇敢です。毅然として、まるで戦場の看護師さんのような働きぶりです。
いっしょに付いてきたジンジャーも、及び腰ではありますが、沿岸警備隊の詰め所に急いで向かいます。みんな子どもとは思えないほど、勇敢で立派な働きぶりです。
マクフィー船長も、心から子どもたちを信頼して、大事な仕事を任せています。
大人の子どもの対する信頼感、人間として対等に扱う姿勢は、この難破船荒らし事件の前からずっと培われてきたもの。
浜辺で遊ぶチムたちを、ボートのおじさんはよく灯台へ連れていき、灯台への荷物運びを手伝わせてくれたり、灯台守やアーニーは、チムたちに灯台の中を探検させてくれ、日頃から仕事の話をよく聞かせてくれていました。
優しくて気っぷのいい海の男たちに、仲間として対等に扱われていたチムたち。日頃から信頼関係を築いていたからこそ、大人子どもの隔てなく、緊急事態にしっかり対応できたのしょうね。ハラハラドキドキの大冒険なのに、なぜか安心感があるのは、根底に強い信頼関係があることによるのだと思います。
灯台に行くといつもワクワクし、灯台の灯を頼りに航海する船を想像しては楽しんでいたチムにとって、大人から信頼され、大きな仕事を成し遂げた充実感は、チムをよりいっそう逞しい男の子にしてくれたことでしょう。
たいへんな大活劇ですが、テクストは大げさすぎず、簡潔にトントンと進むのも気持ちのいいところ。
緊張感のあるお話の中でも、じんわりとしたユーモアもあります。
灯台の1階のにわとり部屋で、難破船荒らしを入れまいと、勇敢に立ち向かった老船長が、あっけなく倒され、先に倒されていた灯台守と、仲良く並んで伸びていたり。その傍らではにわとりたちが、我関せずという風情で淡々と描かれていたり。
お話の終わりも、健気に働き、大好きなアーニーを看病したシャーロットの、叶わぬ小さな恋心が、切なく描き込まれていたりするなど、ちょっとした洒落心もあり・・・。
簡潔なテクストと、雄弁に語る絵と、根底に流れる信頼感と愛情が、見事に融合した素敵な絵本です。
アーディゾーニの絵本は、一見とても地味にも見えますが、それぞれの絵に光るような生命感があって、どれもとても素敵だなといつも思います。
何度でも読み直したい、語り継ぎたい絵本たちです。
今回ご紹介した絵本は『チムとうだいをまもる』
2001.9.20 福音館書店 でした。
チムとうだいをまもる | ||||
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