絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『おりこうなアニカ』

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まっすぐな気持ち

 働く喜びにあふれた暖かい絵本です。

おりこうなアニカ

エルサ・ベスコフ/石井登志子 福音館書店 1985年05月
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by ヨメレバ

 

 読み聞かせ目安  中学年  15分

あらすじ

 田舎の小さな赤い家に、お父さんお母さんと暮らすアニカ。

アニカは、とてもおりこうで、ひとりで服も着られるし、顔を洗ったり、髪をとかしたり、お皿運びやお掃除もできます。

 

ある日、アニカはお母さんから、牛のマイロスの番を頼まれます。

牧場の柵が壊れていて、すぐには修理ができなかったのです。

 

「わかった。わたし、まきばで マイロスを みているわ」

 

アニカは、小さなバケツを持ってでかけました。

途中で、大きな犬に会いました。

犬は、うさぎの赤ちゃんを見においでと、アニカを誘いましたが、アニカは断りました。犬は、困ったことがあったら助けにいくと約束し、アニカと別れました。

 

次は、ほらふきの男の子、ウッレに会いました。

ウッレは、アニカを釣りに誘いましたが、アニカは断りました。

 

アニカは、牧場へ到着!

でも・・・、柵の鍵が高いところについていて開けられません!

ガタガタやっていると、おじいさんに怒られてしまいました。

アニカがわけを話すと、おじいさんは納得。鍵を開け、おまけに木のスプーンをくれました。

 

アニカは、すぐにマイロスのもとへ行きました。

すると・・・、マイロスは壊れた柵から飛び出してしまいます!!

アニカは、マイロスを捕まえましたが、マイロスに引きずられてしまいます。

 

「たすけて!」

 

アニカが叫ぶと、さっき会った犬がやってきて、吠えてマイロスを戻してくれました。

 

アニカは、柵を直しにかかります。

藁の山の上に、ちょうどよい丸太がありました。アニカが取ろうとすると・・・。

 

「やねが つぶれる。ひっぱるな!」

 

藁の山は、小人のお家だったのです。

アニカは、小人のお父さんに、わけを話しました。

小人の一家は、柵を直すのを手伝ってくれました。

 

それから、小人のお母さんは、マイロスのミルクで、パンケーキを焼きました。

そこへ・・・、

 

「アニカ、どこ?」

 

アニカのお母さんの声がしました。

小人たちは、あっという間にいなくなってしまいました。

でも・・・、アニカのバケツには、小人が摘んでくれた野イチゴが、いっぱい入っていました。

 

「おかあさん。みて、のいちごよ!ほら、これは あたらしい スプーン!もらったの。それに、さくも なおったのよ!」

 

アニカは、今までのことを、すっかりお母さんに話しました。

お母さんは、とてもびっくりしましたが、喜んでくれました。

 

家に帰ると、ほらふきウッレもいっしょに、みんなで野イチゴを食べました。

犬にはお礼に、好物の骨をあげました。

 

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 読んでみて・・・

 まっすぐで伸びやか、素直でゆったりとした気持ちにあふれる絵本です。

 

小さな女の子のアニカは、自分ができる仕事を、心から誇りに思い、喜んで自分の仕事をやっています。まったくなんのてらいもなく、素直にまっすぐに。

服を着て、ボタンをかけて、顔を洗って、髪をとかして。お皿も運ぶし、お掃除もします。

大人と同じ仕事ができる喜びにあふれています。

 

そんなアニカが、ある日大役を任されます。

牧場の壊れた柵が直るまで、牛のマイロスが逃げ出さないように番をすること。

大事な仕事を任される。子どもにとって、こんなに誇らしく、自尊心を満たされることはないでしょう。

途中で、遊びへの誘惑があっても見向きせず、アニカはお仕事へ向かいます。

鍵が開けられなかったり、マイロスの力が強くて、ひとりではどうしようもなかったり・・・。困難にも会いますが、懸命なアニカには、必ず助けが入ります。困っているとき、助けてもらえる幸運は、読んでいる子どもたちも、ほっと安心するところでしょう。その助けも、アニカをはじめは誤解したおじいさんからだったり、いかにもべスコフらしい「小人たち」からだったりするところも、子どもたちを喜ばせます。

 

大人と同じ仕事、大事な仕事をやり遂げる満足感。誤解や困難を乗り越えられる達成感、安心感。働く喜びを、子どもたちに、まっすぐ見せてくれるのは、以前ご紹介した同じくべスコフの『ペレのあたらしいふく』にも通じます。

 

masapn.hatenablog.com

 労働のあとには、嬉しいご褒美もあります。

おじいさんからは、木のスプーン。小人たちからは野イチゴをいっぱい。

もらった野イチゴを、大好きなお母さんと、友達のウッレに喜ばれながら食べるのも、満足するところ。

まっすぐな気持ちで、まっすぐ働いて、仕事ができる喜びと、達成感と報酬まで得る。人に喜ばれ、自分も喜び満足する。

育ちゆく子どもたちに、このような労働への、秩序正しい過程と成果を見せてあげるのは、働くことへの意欲や、人のためになることをする喜びを高めてあげられる、とてもすばらしいことだと思います。

 

黄色やオレンジ、草色が中心の水彩の絵も、やや平面的な感はありますが、透明感があって、子どもたちが安心して読める暖かみが、 子どもの育ちを優しく暖かく見守る眼で描かれたという感じが、とても伝わってきます。

 

のびやかで心地よく、まっすぐで秩序正しく、「働く」ということへの意欲や喜びを高めてくれる、素直で暖かい絵本です。

 

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 今回ご紹介した絵本は『おりこうなアニカ』

エルサ・べスコフ作・絵 いしいとしこ訳

1985.5.30  福音館書店  でした。

 

 赤ちゃんへの贈り物に!

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