待ち遠しい遠足
雨で延期になったいもほり遠足。心待ちにしている子どもたちの夢が広がります!
読み聞かせ目安 低学年 5分
あらすじ
明日は待ちに待ったいもほり遠足!
でも、朝になると・・・その日は雨!!
芋ほり遠足は、1週間延期になってしまいました・・・。
待ちどおしい子どもたちは、おいもの絵を描きます。
おおきな紙に「ごしごし しゅっしゅっ ぴちゃぴちゃ しゃっしゃっ」。
おおきな紙をつないでもっとおおきくし、どんどん描きます。
「ごしごし しゅっしゅっ ぴちゃぴちゃ しゃっしゃっ」
「もっと かみ もっと かみ」
つないでつないで、どんどんどんどん描いていくと・・・。
さあ、できた!おおきなおおきなおいもです。
とーってもおおきなおいもです。
できたおいもを、みんなで掘ります。
つなひきみたいに引っ張って、
「ずっぽーん!」
おおきなおおきなおいもは、ヘリコプターで幼稚園へ運ばれ、みんなで洗って、船にして、恐竜「いもざうるす」にもなって、遊びつくすと今度はお料理!
てんぷら、焼き芋、大学芋!
盛大な「おいもパーティー」のはじまりです!!
たくさん食べたら、お腹はぱんぱん。
ふくれあがって「ぶー ぶわん」。
おならで宇宙まで飛んでった。
青空遠足、宇宙遠足。
そして夕方。夕焼け雲に乗って、みんな帰っていきました。
読んでみて・・・
延期になった遠足を、心待ちにする子どもたちの夢が、どんどん果てしなく広がっていくお話です。
正直にいうと、この絵本を取り上げるのは、少し迷っていました。
以前何度かこの絵本を、1年生の読み聞かせで読んだことはあります。
子どもたちはとっても喜んでくれて、読み終わったあと、
「今日のお話、おもしろかったね!」
と、口々にいってくれて、こちらも嬉しい気持ちになっていたのですが・・・。本当にいいのかな?・・・という疑問が、私のなかにありました。
おならで飛びあがる。それも宇宙まで!!
「いもらす 1ごう いもらす 2ごう いもらす 3ごう いもらす 4ごう いもらす 5ごう」
まるまると膨れあがったお腹の子どもたちが、ぽんぽん空に飛びあがるこの場面で、子どもたちは大喜びします。
確かに面白い場面ではあるのですが・・・、ちょっと安直・・・?
「おなら」という、子どもたちが必ず食いつく下ワードを使って喜ばせる姿勢が、浮薄な気がして、ちょっと気になっていたのです。
終わりかたもちょっとあっけなく、空に舞い上がった子どもたちが、雲に乗ってさっと帰っておしまい。お話全体に膨らみが足りないような気がして、喜ばれはするけれど、何度か読んで、ちょっと保留にしていた本だったのです。
でも、それをなぜ今取り上げたのかというと・・・、今(2020年春)のこの状況!
コロナのために自粛、自粛の毎日!!
学校もお休み。楽しいはずのGWもお家で過ごし、運動会や遠足も延期。
お楽しみがすべて先延ばしになって、いつまで待てばいいのやら・・・。
子どもたちにとっての楽しみが、何もかも延期延期の今の状況が、この絵本の遠足を心待ちにしている子どもたちに、ぴったり重なるな~と思ったからです。
そう思って、この絵本を読み返してみると、楽しみを先に先に延ばされている子どもたちのうっぷんを吹き飛ばすのに、「おなら」の爆発力!?ってありかもね・・・と思えるように。
この絵本は、東京の鶴巻幼稚園の先生と園児たちの実際の経験をもとに、描きあげられたものなのだそうです。
絵本には、おおきな紙をつないでつないで描く、子どもたちのおいもの絵が、なんと14ページにもわたって、長々とおおきく描き出されているのですが、鶴巻幼稚園には、本当に子どもたちが描いた「おおきなおおきなおいも」の絵の実物が、縦約1.1メートル横約5.4メートルの大きさで存在していたのだそうです。
大迫力のおいもの絵ですが、それだけ遠足を心待ちにする子どもたちの気持ちが、おおきくおおきく膨れ上がっていたのでしょう。
絵本では、描きあがったおおきなおいもの絵を見た先生が、
「こーんな おおきな おいも どうやって ほりだすの?」
と子どもたちに質問したあと、ダイナミックにお話が動き出します。
大勢で綱引きのようにしておいもを掘り出したり、掘ったおいもをヘリコプター2台でつるして運んだり、園庭を埋めつくすほどおおきなおいもを、みんなで洗ってプールに浮かべ「いもまる」船にしたり、恐竜「いもざうるす」にしたり・・・。
さんざん遊んでお腹がす空いたら「おいもパーティー」で、てんぷら、焼き芋、大学芋。
余すことなくおおきなおおきなおいもを楽しみ、最後は「いもらす1ごう 2ごう」でぽんぽんぽんの宇宙旅行!
心から楽しみにして待ついもほり遠足への期待が、大爆発しています。
先生の声掛けと、子どもたちの応答の掛け合いもリズミカルで、お話をテンポよく動かし、夢を展開させていくのに一役かっています。
集団生活だからこそ出てくる活気、人と人のやりとりから生まれてくる気持ちのリズムが、夢をさらにおおきく展開させているのです。
コロナ禍のなか、オンライン授業を進めている学校もぼちぼちあるようですが、学校はやっぱり人と人とのつながりを、肌で感じながら過ごすところ。自学自習はそれはそれで良さもありますが、学校はただ勉強するだけの場所ではありません。お友達や先生とやりとりしながら、つながりながら生活する場所でもあるのです。
子どもたちと先生との、実際の集団生活のなかから生まれてきたこの絵本の夢の広がり、想像力のたくましさは、こころの交感、共感あってのことと、改めて感じさせられます。
こうやって見てみると、この絵本に感じていた浮薄さも、そう軽々しいものという感じはなくなり、お楽しみを待ちに待たされている子どもたち(大人もね)の、心を解放してあげるのにうってつけの絵本であるように思えるようになりました。
自粛自粛でたまっているうっぷんを、「いもらす1ごう いもらす2ごう」に乗せて、ぽんぽんぽん!と、跳ね上げてしまいましょう!
そんな気持ちになってきました。
今回ご紹介した絵本は、『おおきなおおきなおいも』
赤羽末吉作・絵 1972.10.1 福音館書店 でした。
おおきな おおきな おいも |
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