絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

みんなのベロニカ

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新しい友達

仲良くなるってやっぱり幸せ♡

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読み聞かせ目安  中学年  10分

あらすじ

パンプキンさんの農場に、新しい仲間がひとり増えました。

かばのベロニカです。

ゴロゴロするのにぴったりの泥んこ。きれいな原っぱ。たくさんの動物たち!

ベロニカは、一目で農場が気に入りました。

 

でも・・・。大きな体に、大きな口!

誰にも似ても似つかないベロニカを見て、犬のイノジーも猫のコットンも、馬のストローも、他の動物たちもみんな、ベロニカが気に入りません。

みんなベロニカを避けて暮らしました。

 

ベロニカはしょんぼり・・・。

きれいな池も、おいしそうな草も、なんだか色あせて見えました。

 

それからも、誰もベロニカと口をきかず、遊びもしません。

ベロニカはすっかり食欲をなくして、家から出てこなくなりました。

 

「あれは、なぜ でてこないのかねえ」

 

だんだんみんなも心配になってきました。

動物たちはこっそり、ベロニカの様子を伺いにいくようになります。

すっかりやせ細ったベロニカを見て、動物たちはせっせと餌を運ぶようになりました。

少~しずつ、口もきくように!

 

やがてベロニカは元気になり、また外へ出てくるようになりました。

 

「ベロニカが でてきた!」

「おはよう ベロニカ! げんきになって よかったね」

 

ベロニカはおおきくにっこり。

 

「いい わらいがおだね」

 

みんな大喜びです。

ベロニカは、みんなと輪になって遊びました。

農場は、来たときよりもずっと、素敵な場所に見えました。

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読んでみて・・・

以前ご紹介した『がちょうのペチューニア』や『ぼくはワニのクロッカス』と同じ、ロジャー・デュボアザンの絵本です。

農場に新しい仲間が入るという点では『クロッカス』と似たような趣向で、「パンプキンさん」の農場で、その名もズバリ「がちょうのペチューニア」や、「めんどりのアイダ」などが出てきたりするところは、『ペチューニア』の舞台となった農場でのお話の続編という感じの絵本になっています。

 

masapn.hatenablog.com

 

masapn.hatenablog.com

今回は、大きなかばのベロニカが、農場に仲間入り。

素直で天真爛漫なベロニカは、新しい住処に興味津々!

喜びと期待に満ちて、農場にやってきます。

大きな体に似合わず人懐っこく、ちょっととぼけたような愛嬌のある表情が、魅力的なベロニカ。楽天的で陽気な人柄(かば柄?)がよく伝わってきます。

でも一変。農場の動物たちに受け入れてもらえてないと知るや、たちまち病気になってしまう弱気な一面も。

実に表情豊かで、愛らしいかばさんです。

 

農場の他の動物たちもみな、個性的で表情豊か。

がちょうのペチューニアをはじめ、馬のストロー、猫のコットン、牝牛のクローバーなどなど、たくさんの動物たちはみな、それぞれがそれぞれの動物らしく描かれ、性格もよく伝わってくるように描かれています。

はじめはみんな興味津々で、新しくやってきた大きなかばのベロニカを見ていますが、初めて見るかばに怖い気持ちや気おくれから、だんだん何やかや難癖を付けて避けるように・・・。

でも、そんなふうにしていると、日に日に動物たちの表情は暗くなっていき、うしろめたい気持ちになっていきます。

画面も全体的にグレーがかって暗い印象に。動物たちの気持ちが沈んでいくのがよくわかります。草を食んでも、あまりおいしくなさそうです。

仲間外れのベロニカも、来たときはとっても魅力的に見えた池が、つまらなくみえ、水に沈めた顔は、目つきもうつろ・・・。

動物たちの心情を言葉で多く語ったりはしませんが、絵が十分に胸の内を語っていて、見ていてなんとも哀れな気持ちになってしまいます。

 

そしてとうとうベロニカが家に引きこもってしまうと、農場の動物たちの顔も、心配でたまらない様子に。本当は心優しい動物たち。この状況に耐えられなくなって、1匹1匹がそれぞれ、仲間には内緒でこっそりベロニカの様子を伺いにいくように。

餌を持っていくようになると、その顔々の生き生きしていること!

仲間外れにしていたときとは、打って変わった晴れやかな顔です。

足取りも軽く、ベロニカの元へ通います。

 

そうして最後は、みんなで仲良く遊ぶようになり、よかったね!

輪になって遊ぶ姿の楽しそうなこと‼

 

ごく単純なストーリーですが、動物たちそれぞれの姿、表情が実に生き生きとしていて、絵がお話を十分に語っている絵本です。

お話自体も、仲間外れという障壁、ちょっと辛い経験を乗り越えて、本当の友達になるという晴れやかな瞬間を迎える喜びが、子どもたちにとって、とても身近で切実な問題なだけに、読み終わったあとは、大きな満足を与えてくれると思います。

 

行先の不透明な近頃の社会状況を、小さな子どもたちもきっと敏感に察知していることと思います。そんな中で、何があっても大丈夫!と人生を楽天的に肯定してくれる、このような絵本は、子どもたちの心の支えになってくれるのではないでしょうか。

 

ユーモアと善良さで不安を取り払い、明るく前に進んでいく心の支えになる、いい絵本だなと思いました。

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今回ご紹介した絵本は『みんなのベロニカ』

ロジャー・デュボアザン作・絵 神宮輝夫訳

1997.6.10  童話館出版  でした。

みんなのベロニカ

ロジャー・デュボアザン/神宮輝夫 童話館出版 2020年09月
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