絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『くれよんのはなし』

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くれよんと心の旅

 子どもの心の奥を描いた絵本です。

くれよんのはなし

ドン・フリーマン/西園寺祥子 ほるぷ出版 1979年09月
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 読み聞かせ目安  低学年  3分

あらすじ

 箱に入った8色のくれよん。壁には画びょうで張られた画用紙があります。

くれよんの箱がぽっと開き、

 

「わあーい、えをかこう! えをかこう!」

 

青いくれよんが、空と海を描きました。

そこに、黄色のくれよんが、太陽と島を描き、茶色のくれよんが、島の上に、ひとりの男の子と、2本の木を描きました。

緑のくれよんは、木に葉っぱを、島の上で日向ぼっこをしているカメを描きました。

 

でも・・・、男の子は悲しそう。

 

紫のくれよんは、男の子が遊べるように、棒を持たせてやります。

 

でも・・・、まだ男の子は悲しそう。

 

黒いくれよんは、男の子が家へ帰れるよう、船を描いてあげました。

白いくれよんは、棒に旗をつけ、赤いくれよんは、旗に「たすけて!」と字を書きましたが・・・、船は助けにきてくれません!!

 

すると・・・、カメが男の子を見上げ、にっこり笑って、背中に男の子を乗せて、船まで泳いでくれました。

 

「ばんざーい!」

 

男の子は船に乗ることができました。

カメは島に戻り、眠ります。

8色のくれよんたちも、箱に戻りふたをしめました。

 

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 読んでみて・・・

 

くれよんで絵を描く。

子どもたちの日常によくある、身近な動作をとおして、子どもの心の動きを描いた絵本です。

 

まずはじめに、箱に入った8色のくれよんが紹介され、つぎに真っ白な画用紙が、現れます。何がはじまるのかな?どんな絵が描かれるのかな?と、ワクワクと期待が高まります。

 

箱から飛び出したくれよんは、空、海、太陽、島・・・と次々に、伸び伸びと楽しそうに絵を描いていきます。

でも・・・、そうやって描かれていった絵の男の子が、なぜか悲しそうな顔になってしまいました・・・。

 

ここまで読むと、子どもたちは、「あれ・・・?どうして・・・?」と不安な気持ちになってしまいます。

 

くれよんたちは、男の子のために、棒を描いたり、旗を描いたり、船まで描きますが、男の子を助けることができません。

子どもたちは、ますます不安になってしまいます。

 

でも・・・、緑のクレヨンが描いていたカメが、男の子を救います!

 

男の子は無事、船に乗り、子どもたちはほっと安心します。

 

大きな広い海に浮かぶ島の上に、男の子はひとりぼっち。

ひとりぼっちのさみしさを、味わうこと。子どもたちの日常に、くれよんで絵を描くことと同じように、存在するできごとなのかもしれません。

小さな子どもにとっては、外の世界がすべて、この絵本の男の子のように、果てしなく広い海のようなものなのかもしれません。

広大な海のなかで、ひとりいる小さな自分。そんな頼りなさ、心細さ。子どもが心の奥にひっそり抱えているものを、描いている絵本なのだと思います。

 

でも、男の子は救われます。

カメの背中に乗り、大きな船で家路に着きます。

身につまされる不安のあとの、安心感。心から「よかった!」と思える結末があることで、読んでいる子どもの心は安定します。

安心できる場所に帰れること、それを確認できるということが、子どもたちの心の支えになっていくのだと思います。

 

島に描かれた男の子の気持ち。

男の子を、悲しい顔に描いてしまったくれよんの気持ち。

子どもたちは、どちらの気持ちに寄り添って、この絵本を読むのでしょうか。

自由闊達に楽しく描いた絵が、悲しいもののなってしまっていた・・・。

やったことが、思いがけない結果になってしまうことも、日常にはあるかもしれません。この絵本は、そんな一見失敗なできごとも、結果回復される安心感も与えてくれます。

 

不安と安定。悲しみと喜び。

心を揺さぶられたあと、ほっとできる瞬間を持てることが喜びとなる。

とてもシンプルでさりげない、小さな絵本ですが、子どもの心の奥に響くものを持った、すぐれた絵本だと思います。

こういった絵本を、読み重ねる経験を積むことで、子どもたちの心もさりげなく自然に、安定したものに育っていってくれたらいいなと思いました。

 

 

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今回ご紹介した絵本は『くれよんのはなし』

ドン・フリーマン作 西園寺祥子訳

1976.10.10  ほるぷ出版  でした。

 

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