初めての驚き
好奇心旺盛な子どもそのものといったこねこのお話。
読み聞かせ目安 低学年 5分
あらすじ
あるところの小さな庭の小さな池に、小さなカメが住んでいました。隣の家には小さなこねこが住んでいました。このこねこは、とてもいたずらなこねこでした。
毎日カメは庭をゆっくり散歩します。
ある日、カメがいつのもように散歩していると、いたずらこねこが庭の中に入ってきました。
いたずらこねこは、まだカメを見たことがなかったので、驚いて、用心しながらカメのそばまできました。そして・・・カメを前足でポンと叩きました。
すると・・・こねこの顔は、目玉が飛び出しそうになりました!
なぜって、カメの首が消えてしまったからです。
こねこは、もう一度叩いたら首が出てくるかと思い、もう一度ポンと叩きます。
すると・・・こねこ顔は、また目玉が飛び出しそうになりました!
なぜって、カメの足が消えてしまったからです。
こねこはじっとカメを見て、カメはじっと首と足を甲羅の中に入れたま座っています。
しばらくすると・・・カメは足を出し、こねこは一歩後ろに下がりました。
次に、カメは小さな鼻をのぞかせ、こねこはまたもう一歩後ろに下がりました。
カメは、一足一足こねこに近づき、こねこは一足一足後ろへ下がり・・・・・・
たいへん!バシャーン!
こねこは池におっこちてしまいました。
水が大嫌いなこねこは、池を飛び出すと、一目散に家へ帰り、水が大好きなカメは、池に帰っていきました。
こねこはもう決して、庭に出て、後ろ向きに歩いたりなんかしませんでした。
読んでみて…
画面下4分の1辺りに黒い線が引いてあって、地面と空を分けている。右端に板塀、左端に小さな池という固定された一場面だけ。白地に黒の鉛筆描き、色は池の緑だけの、とてもシンプルな構成で描かれた絵本です。
このシンプルな場面で、こねことカメが行ったり来たり。ちょっとした寸劇を観ているような面白さがあります。
いたずらこねこは、好奇心いっぱいの子どもそのものといった感じです。
小さな子どもにとって、日常はすべてが初めてで、驚きの連続。
この絵本のこねこもそうで、初めて会ったカメの動きに、ただ驚くばかり。驚きながらも手を出さずにはいられない、恐る恐る見ていると・・・今度は向こうから寄って来る。おじけて下がって、バシャーン!!池に落ちる。びっくりして慌てて家に帰る。
初めての経験をして、驚いて、失敗して・・・。こうやって子どもは経験を重ねていくんだなということが、よくわかります。この本を読む幼い子どもたちも、自分の身近な経験と照らし合わせて、うなずくところだと思います。
余計なものが一切なく、固定されたシンプルな場面構成なので、初めての経験の驚きがより際立っているようです。
また、この絵本では、こねこがカメをポンと叩き、目玉が飛び出しそうになる場面で、二度
「こねこは、めのたまが とびだしそうな かおに なりました!なぜってーーどうなったと おもいますか?」
と、問いかけがあります。
この問に子どもたちは口々に、
「首がひっこんだ!」
「頭が引っ込んだ!」
「足が引っ込んだ!」
「手が引っ込んだ!」
と嬉しそうに答えます。読み聞かせのなかで、こういったちょっとした掛け合い的なものがあると、入学したての1年生や、特別支援級の子どもたちには喜ばれます。
とてもシンプルな絵本ですが、すっきりとした構成で、子どもたち誰もが経験するようなことが描かれた本を、リラックスして、心を解放して味わう時間があるのもいいものだなと思いました。
今回ご紹介した絵本は『いたずらこねこ』
バーナディン・クック作 レミイ・シャーリップ絵 間崎ルリ子訳
1964.11.1 福音館書店 でした。
いたずらこねこ | ||||
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