優しくて勇敢なはげたかの楽しいお話
洒落た絵とユーモアあふれるチャーミングな絵本です。
読み聞かせ目安 中学年 7分
あらすじ
ある日のこと。メキシコに住むはげたかのオーランドーが、砂漠の上を飛んでいると、男の人が倒れているのを見つけました。
オーランドーは、男の人を助けてあげようと、持ち物をバンダナに包んで飛び立ちます。持ち物の中には、写真が入っていて、何やら文字も書いてありました。
オーランド―は、農家のおじさんに出会いました。
でも、おじさんは字が読めなかったので、オーランド―を警察署へ連れていってくれることになりました。
けれども、字が英語だったので、警察官も読めません。
警察官は、学校の先生に聞くことにしました。
するとそれは、アメリカ人のネスタ―・ナッシュという人のパスポートで、バーモント州の、プラトルボロウに住んでいることがわかりました。
オーランド―は、首に包みをさげ、脚に住所を書いた紙を結んでもらい、飛び立ちました。
オーランド―は、昼も夜も飛び続け、ナッシュの奥さんと息子のフィンリーに、荷物を届けました。
ナッシュさんからの連絡を、心待ちにしていた2人は大喜び。
それから、ナッシュの奥さんとフィンリーとオーランド―は、船に乗りメキシコへ向かいました。
メキシコに着くと、ロバに乗って、お父さんの荷物の地図を頼りに、お父さんの見つけた金鉱目指して、冒険の旅に出かけました。
ところが、金鉱の場所を知っている一行は、途中で強盗に狙われ、フィンリーがさらわれてしまいます!
オーランド―は、すぐに強盗たちを見つけ、大きな岩を頭上からゴチンと落っことし、フィンリーを連れ戻しました。
それからフィンリーを連れたオーランド―は飛び続け、ある村へ降り立ってみると・・・、そこはなんと運のいいことに、お父さんのナッシュさんが、救助されていた村だったのです‼
ナッシュ一家は幸せの再会!
ナッシュさんは助けてもらった恩返しに、村人たちに金を分けてやることにし、みんなで金を掘って、豊かに暮らすようになりました。
読んでみて・・・
優しくて誠実で、愛嬌たたっぷりのはげたかのお話です。
はげたかといえば、死肉を喰らう獰猛な鳥というイメージがありますが、オーランド―は違います。たまたま見つけた気の毒な旅人のために、長い長い旅をして、家族との再会を果たしてあげます。とても賢いことに、旅人の荷物の中から、身元の分かりそうなものを選び持ち、人間に尋ねていくのです。
お話の間、オーランド―は一言も言葉を発しませんが、好奇心旺盛そうで愛嬌たっぷりのまんまるな目をキョロキョロさせて、丁寧に荷物を運び、旅人の身元を追求していきます。
出会う人々も、みんなとても親切です。オーランド―の求めに応じ、旅人の身元解明に尽力してくれます。
そう、オーランドーも農夫もお巡りさんも学校の先生も、みんなとても優しく人がよく、人助けのために荷物を首にさげ、懸命に長い長い飛行を続ける、オーランド―の純真無垢な行いと相まって、この絵本全体にとても誠実で清らかなイメージを与えているのです。
絵は、白地に黒の線描き。グレーとセピアと赤茶のみの、すっきりした中にも暖かみが感じられる色合い。
余白の取り方も優れていて、清潔感を与えながら、お話の展開に劇的な効果を持たせています。絵の構図的にも、落ち着いた色合いとともに、とても洒落た仕上がりになっています。
夜の場面は、色数が少ないため、かえってとても印象的。
墨のように真っ暗な夜空や暗がり、馬で走り去る強盗たちの陰が、真の闇のようで、とても心に残ります。夜空を照らすまん丸な白い月も印象的です。
オーランド―はじめ、登場人物の表情も豊かです。
まあるい目に、にやっとした口元。ちょっと不気味でユーモラスな感じ。それでいて人の良さが感じられる、不思議な表情です。
オーランドーは、はげたかという、本来表情が付けにくい生き物だと思いますが、実に愛らしく、優しさと誠実さ、そして勇敢さがよく伝わってきます。とてもチャーミングなはげたかさんです。
作者のトミー・ウンゲラーは、ちょっとシュールだったり、ブラックだったり、ナンセンスだったりするユーモアに溢れた絵本の作者ですが、この『はげたかのオーランドー』も、「はげたか」が持つ獰猛なイメージ、死肉をついばむ暗いイメージを、くつがえすという意味で、独特なナンセンス感を表現しているのかもしれませんね。
すっきりとした中に、暖かいユーモア溢れる、楽しくてセンスのある素敵な絵本だなと思いました。
今回ご紹介した絵本は『はげたかのオーランドー』
トミー・ウンゲラー作 小宮由訳
2021.6.28 好学社 でした。
はげたかのオーランドー | ||||
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