絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『ぼくはワニのクロッカス』

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なかよきことは美しきかな

お友達になれる喜びにあふれた美しい絵本。

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読み聞かせ目安  中学年  15分

あらすじ

あひるのバーサとうさぎのジョニーが、木の下で大変なものを見つけてしまいました。

ワニです!

大きなしっぽに大きな口!

口にはぎとぎとの歯が、ずらりとならんでいます‼

ワニの名前はクロッカス。ワニでも気性は穏やかで、みんなと仲良くなりたくてしかたありません。バーサとジョーニーは、クロッカスを農場の納屋へ連れていきました。

 

農場の動物たちは、クロッカスを一目見て、それはそれは驚き逃げ回りましたが、クロッカスが優しいワニだと知ると、みんなすぐに仲良しになりました。

それから動物たちは、納屋にせっせと藁を運び、クロッカスの秘密の隠れ家を作り、食べ物を運び、みんなでクロッカスの面倒をみてくれるように!

みんなの優しさに、クロッカスは思わずほろり。嬉し涙を流しました。

 

けれどある日のこと。

とうとう農場の奥さんのスイートピーさんに、クロッカスは見つかってしまいました!

スイートピーさんは、大慌てで旦那さんにしらせました。

 

動物たちは、必死になってクロッカスを隠します。

クロッカスはというと・・・。怖がるよりも何よりも、奥さんと仲良しになれる方法を、一生懸命考えました。

 

そして・・・いいことを思いつきます。

花の好きなスイートピーさんに、毎朝花束を届けるのです!

 

翌朝、テーブルの上の、真っ白なひなぎくの花束を見たスイートピーさんは、うっとり。誰が届けてくれたのかしら?

 

次の日は、美しい紫色の花束。

また次の日は、すらりとした黄色い花束。

奥さんは、毎朝の花束との出会いが、楽しみになりました。

 

でもいったい、誰が届けてくれるのでしょう?

スイートピー夫妻は、ある朝まだ暗いうちから、じっと様子を伺うことに。

すると・・・やってきたのは、ワニのクロッカス!

スイートピーさんは、びっくりしましたが、もう逃げずに嬉しそうに、クロッカスに近づいて、頭を撫でて、花束のお礼をいいました。

 

それからというもの、クロッカスはスイートピーさんの農場で、他の動物たちと一緒に、仲良く暮らしました。

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読んでみて・・・

とても暖かく、心が和む優しいお話です。

 

クロッカスは大きなワニ。

太いしっぽに、大きな口。口の中には、ギトギトの恐ろし気な歯がずらり。

見た目はすご~く怖そうですが、心は優しくて、人懐っこくて、みんなと仲良しになりたくて仕方がない、とてもかわいいワニさんです。

いつも怖がられてばかりのクロッカスが、みんなと友達になりたい、仲間になりたいと切実に願って、その気持ちを真っすぐに表して、願いが叶うお話。

読み終わると、本当に心がほっこり安らぎます。

仲良くなれてよかったね。

手放しで喜べる、幸せな絵本です。

 

絵もとっても明るくてきれいです。

コラージュの手法を取り混ぜて描かれた絵の数々は、どのページもカラフルで暖かみがあります。

大きなワニのクロッカスは、迫力がありながらも、人懐っこい愛嬌のある顔。

優しくて好奇心いっぱいの、くりくりしたつぶらな瞳が印象的です。

あひるやうさぎ、うま、うし、ぶたetc・・・農場のたくさんの動物たちも、それぞれ個性豊かで、ユーモラスで愛嬌があって、みんな生き生きしています。

絵本全体が、クロッカスが集めてきた数々のお花の花束のよう!

色とりどりで、明るく楽しい雰囲気に満ちています。

 

はじめは怖がっていた動物たちが、クロッカスと仲良くなって、かいがいしく食事を運んだり、寝床を作ったり。小さなあひるのバーサが、大きなクロッカスの母親代わりになって、寝かしつけまでしているのなんて、とってもユーモアがあって、のどかで楽しい場面です。世話をする方もされる方も、お互いが存在意を認め合い、心を開いて、素直に幸せを感じあう素敵な隠れ家です。

 

スイートピーさんと、なんとかして仲良くなりたいと思い、クロッカスが考えた方法が、花束を贈ることというのも、クロッカスの恐ろし気な大きな見た目とギャップのある、かわいらしく平和的な思い付きで、心和むところ。

せめて大好きだっていう気持ちだけでも奥さんに伝えたいと、夜通し考え込むクロッカスの姿は、あごに手をあて、遠くの方を見る目が、思慮深そうで愛嬌があって。後ろ脚やしっぽの動きまで、なんだか人(ワニ?)の良いとぼけた味わいが伝わってくる絵になっています。

 

そうして最後は、クロッカスの思いがスイートピー夫妻に通じ、みんなで一緒に仲良く暮らすハッピーエンド。

心を開いて、お互いが存在を認め合い、わかり合い、距離を縮めて近づいて、仲良しになる。人と人との距離を、取らなければならなくなってしまった今のような時代に、近づくことの喜びを表したこんな絵本は、必要だなと思いました。

 

人と人とが、お近づきになれる幸せ、喜びを分かち合える幸せを、素朴で朗らかで暖かい絵本を通して、再確認したいなあと、私たちの暮らしに取り戻したいなあと思いました。

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今回ご紹介した絵本は『ぼくはワニのクロッカス』

ロジャー・デュポワザン作 今江祥智 島式子訳

1995.10.25  童話館出版  でした。

ぼくはワニのクロッカス

ロジャー・デュボアザン/今江祥智 童話館出版 1995年10月
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