絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『あくたれラルフ』

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憎めないあくたれ

あくたれネコのラルフが、あくたれの限りを尽くしたあとは・・・。

            

読み聞かせ目安  中学年 8分

あらすじ

ラルフはセイラが飼っているネコです。ラルフはとてもあくたれです。

セイラのバレエのおけいこをからかったり、乗っているブランコの枝を切ったり、パーティーのテーブルに載っているクッキーをぜーんぶ1口ずつ食べたり、お父さんのお気に入りのパイプでシャボン玉を吹いたり、自転車で食堂に飛び込んだり‼

毎日すごいあくたれようです。

 

そんなラルフが、ある晩家族みんなでサーカスにいったときのこと。それはそれはひどいあくたれを働きました。

イヌの首に風船を縛り付けて飛ばしたり、曲芸芸人を突き落としたり、ゾウをおどしたり!!サーカスをめちゃくちゃにしてしまったのです。

 

お父さんの怒りは爆発!とうとうラルフは、サーカスにおいてけぼりにされてしまいました。

 

ラルフはサーカスで、これでもかというくらい働かされます。

みんなの食べ残しのポップコーンの片付け、ラクダの水やり、力持ちの休憩中バーベルを持つことなどなど…。

あれだけのあくたれが、なんの抵抗もせず働くのですが、とうとうナイフ投げの曲芸の的になるのを断ると、

 

「おい わけぇの、ここじゃ、だれでもみんな はたらくんだ」

 

と、腕っぷしのつよいあんちゃんから、檻に放り込まれてしうのでした。

そして檻の中でラルフは、サルやゾウにさんざんからかわれます。

 

一週間後、すっかりやせ細ってしまったラルフは、ついにサーカスを逃げ出します。

街の横丁でラルフは休みますが、ヤクザの猫やきたないネズミに悩まされ、ついには「なまごみねつ」に罹ってしまい「ぼく さびしい」と泣き出してしまいます。

 

そんなとき、哀れなラルフに救いの神が!

セイラが探しに来てくれたのです‼

セイラとラルフは喜んで抱き合い、キスをし、今までそれぞれどうしていたか話しをしました。

それから家に帰り、お父さんお母さんにも喜んで迎えられ、ラルフはつくづく柔らかいベットと温かいミルク、優しい家族のいる家があるのを幸せに思いました。

今後もう二度と、あくたれはすまいと思いました。

 

でも…それからもエビのごちそうのある時だけは…どうしても我慢できずに、あくたれてしまうのでしたが…。

                      

読んでみて…

どうしようもないあくたれのラルフ。

暴れん坊であくたれのラルフは、「ギャングエイジ」と呼ばれる中学年の子どもたちにぴったりだなと思います。家族やお友達は大好きなのに、自分でも制御しきれないエネルギーを持て余し、ついついあくたれを働いてしまうラルフは、いたずら盛りの子どもそのものといった感じです。

 

最初のページからして、いきなりラルフは、不敵な笑みを浮かべて、大好きなセイラが大事にしているお人形の首をもぎ取っています。真っ赤なネコは鋭い目つきでべろりと舌を出し、いつもやりたい放題のあくたれようです。それでもセイラはラルフが大好きで、ラルフがお父さんの機嫌を損ねないか、いつも心配しています。

 

いたずらっ子や優しい子、それぞれがラルフやセイラに自身を重ねてみることができるようです。

 

あくたれのラルフが、サーカスでこき使われ、いじめられている場面、街の汚い片隅でヤクザのネコに囲まれ、ネズミにすら抵抗できずに足を噛まれている場面では、子どもたちはじっと画面に見入っています。みじめで哀れなラルフの姿を、わが身やわが友として自分の身に引きつけて感じているようです。

 

そしてセイラと再会し、暖かいベットとミルクと家族のいる家に帰られたとき、みんなほっとします。帰る家があること、安心できる場所のあることの喜びを、しみじみと感じることができます。

 

この絵本は、一緒に読み聞かせをしている図書ボランティア仲間の中でも人気で、来週読もうと思っていると、他の人に先を越されてしまった!なんてこともよくあります。お母さんたちには、あれほどのあくたれのラルフが、「なまごみねつ」に罹って涙を流し、よれよれになっている姿などが、なんとも哀れであり、可愛くも可哀想でもあり、放っておけなく思えるんですね。

 

憎めないあくたれっこです。

 

この絵本は、色遣いがとても大胆で、ラルフは猫ですが真っ赤です。ヤクザのネコも紫だったり、赤とオレンジのしましまだったり。サーカスの人々の姿形も不気味です。絵本にしてはずいぶん挑戦的で斬新な絵だと思います。

 

絵を描いたニコール・ルーベルは、色彩の魔術師と呼ばれたフランス野獣派の画家マティス(1869~1954)の影響を強く受けているそうです。そういわれてみれば、なるほど、色遣いや構図の取り方など、マティス的な感じがします。ラルフの赤は、溢れんばかりのエネルギーの現れであったり、ヤクザネコの奇妙な色はその存在の不気味さの表象なのかなと思います。

 

『あくたれラルフ』はその後シリーズ化し、『あくたれラルフのたんじょうび』や『あくたれラルフのクリスマス』、『あくたれラルフのハロウィン』(全てPHP研究所)などが出版されています。アメリカではテレビでも放映されたそうです。

 

今回ご紹介した絵本は『あくたれラルフ』

ジャック・ガントス作 ニコール・ルーベル絵 石井桃子

1994.12.1 童話館出版  でした。

あくたれラルフ

ジャック・ガントス/ニコル・ルーベル 童話館出版 1994年12月
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