友達になるということ
『アンガスとあひる』のアンガスが、ちょっと大きくなったお話。
読み聞かせ目安 低学年 4分
あらすじ
スコッチテリアの子犬アンガスは、日ごとに、いろいろなことを覚えて、大人になっていきました。
かえるが飛べること。でも自分は飛べないこと。
風船が、割れること。人のものを食べてはいけないということ。
でも・・・。まだよくわからないものがありました。
ねこです。
ねこは、アンガスが近づくと、跳んで逃げます。
ソファのうえ、暖炉棚のうえ、テーブルのうえ。
どんどんアンガスの届かないところへ逃げてしまいます。
アンガスは、まる3日間、ねこを追いかけました。
それでも、ねこを捕まえられません。
捕まえるどころか、姿さえ見えなくなりました。
どこへいったのでしょう?
アンガスは、がっかり・・・。
すると・・・。
「グールールールールールーー」
ねこの声がしました!
アンガスは、ねこというものがわかり、ねこは、自分が戻ってきて、アンガスが喜んでいることがわかりました!!
読んでみて・・・
以前ご紹介した『アンガスとあひる』(マージョリー・フラック作・絵 瀬田貞二訳 1974.7.15 福音館書店)のアンガスが、ちょっと大きくなったお話です。
知りたがりのアンガスは、ちょっと大きくなって、いろいろなことがわかるようになりました。でも、ねこのことは、まだよくわかりません。
アンガスが近づくと、ねこはすぐ逃げてしまいます。
「フーッ!!!」といって、アンガスの耳を、ひっかいたこともありました。
それでもアンガスは、ねこを追いかけます。
まる3日間も追いかけましたが、アンガスが追えば追うほど、ねこは高く遠く逃げ、アンガスの視界から遠ざかってしまいます。
でもアンガスが、がっかりしていると、ねこは戻ってきて、いつのまにか2匹は、仲良く一緒にミルクを飲むように・・・。
アンガスが、ねこを追いかけ、最後は仲良くなる過程は、子どもがお友達をつくる様子に似ています。気になる相手を追いかけ、逃げられ、つまらない思いをしているところ、いつの間にか仲良しになっていて・・・。相手との距離をはかり、はじめはうまくいかなくても、徐々に互いを知り、しだいに心地よい関係を作っていく。子どもたちもお友達をつくるとき、こんな思いをしているのではないでしょうか。
アンガスは始め、別にお友達が欲しいと思って、ねこを追いかけていたのではありませんでした。でも、どうにも気になってしかたない誰かさんを追いかけるのは、自分でも気づかないうちに、友を求めていたのでしょうね。
まだ小さかった『アンガスとあひる』のときは、ただあひるを追って、びっくりして帰るだけでしたが、今回のアンガスは、体が少し大きく成長しただけでなく、他者とのかかわり方も成長しているようです。
アンガスと同じように、日々育ちゆく幼い子どもたち。きっと、アンガスの心の動きに、無意識のうちに自分の心を重ねて、読んでいくのではないかなと思います。
『アンガスとあひる』では、「行って帰る」体の振り子運動を、体で共感し、この『アンガスとねこ』では、無意識のうちに友を求め、友を作るようになる心理的成長に、心で共感することができるようになっているのではないかと思いました。
絵の構成は、『ねこ』も『あひる』と同じく、カラーとモノクロが交互に出てくる構成。色遣いも、鮮やかな黄色を中心に、ちょっとくすんだ緑、水色、橙を重ねたもので『あひる』と共通です。
明るい黄色が、好奇心旺盛な育ち盛りのアンガスの、明るく健やかな心を表しているようです。緑や水色、橙と、黄色や、黒い線の重なって織りなされる配色は、重なり具合が絶妙!米国での初版は1930年代。なんともう90年近くも前!!のものでありながら、全然色あせることなく、むしろモダンで洒落ています。
瀬田貞二訳のテクストも、簡潔ですっきりしていながら、幼いアンガス(子ども)への暖かい眼差しが感じられます。アンガスとねこの追いかけっこの場面は、躍動感も満点です!アンガスに追われるたび、ねこは高い高いところへ逃げるのですが、そのたび、
「ねこは ~に とびあがりーーアンガスのせいでは もう とどきませんでした!」
というフレーズが繰り返されるのも、愉快で心地よく響きます。
絵本のなかでは、もう古典といわれる部類に入るものですが、今なお色褪せることなく、幼い子どもの育ちをよく表した素敵な絵本だなと思いました。
今回ご紹介した絵本は『アンガスとねこ』
1974.10.1 福音館書店 でした。
アンガスとねこ |
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