絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『あかいえのぐ』

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健気な子どもたちの奮闘 

じんわりと優しさが心に沁み渡る絵本です。

             

読み聞かせ目安  高学年 10分

あらすじ

サラとサイモンは、絵描きのお父さんとお母さん、まだ赤ちゃんの弟といっしょに、たった一部屋のアパートで暮らしています。

 

お父さんはとてもきれいな絵を描くのですが、なかなか売れず、一家は貧しい暮らしをしています。お母さんはお金に困るといつも泣きながら「ああ、どうしましょう。」とうろたえますが、お父さんはきまって、「だいじょうぶだよ。もうすぐ けっさくが かんせいするんだ。そうしたら、きっと かたくうれて、おかねもちになれるよ。」といってお母さんを励ますのでした。

 

サラとサイモンはいつも子どもなりに一生懸命家の手伝いをします。買い物やお皿洗い、赤ちゃんの世話、お父さんの絵筆を洗ったり、モデルになることもありました。貧しくても、みんな楽しく幸せに暮らしていました。

 

けれども、ついにお金が底をつき、お父さんの傑作を仕上げるための赤い絵の具さえも、買えなくなってしまいました。

サラとサイモンはさまざま奔走しますが、万策つきたというとき・・・、かつてお父さんを勘当したロバートおじさんが、救いの手を差し伸べてくれたのです!

おじさんは、サラとサイモンの街での様子をみて、心を動かされたのでした。

 

おじさんの助けのおかげで、お父さんは絵が売れるようになり、有名な画家になりました。お金持ちになりましたが、一家はずっと、だいすきな一部屋だけのアパートで暮らし続けるのでした…。

                     

読んでみて…

心温まる一冊です。とても穏やかで、派手さはないのですが、じんわりと優しさが心に沁み、暖かさが記憶に残る絵本です。

 

『あかいえのぐ』というタイトルで、表紙は美しい水彩の多色使いで描かれていますが、中身は黒いペン描きに薄い茶と緑を塗ったページが見開きごとに交互に出て来るだけの、シンプルな抑えた表現になっています。それでも決してそっけないなどということはなく、ページ全体から伝わってくる暖かさは、ペン描きの線の柔らかさからでしょうか。丁寧な絵ですが、人物の表情は細かく描写されてはいません。それでも物語テクストと相まって、人物の表情や性格が見る者に伝わってきます。

 

貧しい暮らしを描きながらも、その中にある楽しさや喜びが、子ども目線からいきいきと綴られているのも印象的です。サラとサイモンのまっすぐで健気な奮闘、お父さんの楽天的な性格もこの絵本に明るさを与えています。

 

読み終わったあと、サラとサイモンに、お父さんとお母さん、赤ちゃんに、ロバートおじさんや古本屋のおじさん、登場人物みんなに心からよかったねと言いたくなる暖かい絵本です。

 

今、街中には、にぎやかな色遣いの、ぱっと子どもの目をひく派手な絵本が溢れています。この絵本はそんな絵本たちに比べると、とても地味で目立ちません。でも、心に残る印象はとても深いと思います。なかなか手には取られにくい、目立たないけれどとても優れたこんな絵本を、ぜひ子どもたちにたくさん届けていきたいと思っています。

                      

今回ご紹介した絵本は『あかいえのぐ』

エドワード・アーディゾーニ作 津森 優子 訳

2014.5.1  瑞雲舎  でした。

あかいえのぐ

エドワード・アーディゾーニ/津森優子 瑞雲舎 2014年05月
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