絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

マリールイズいえでする

新しいお母さん?を探す旅

からりと明るいユーモラスな絵本です。

            

読み聞かせ目安  中学年  10分

あらすじ

マリールイズは、マングースの女の子。

いつもは良い子だけれど、ある日悪い子になって、たくさんいたずらをしてしまいました。どろんこパイを作ったり、お布団にしっぽ用の穴を開けたり、はげたかの卵をふくろうの巣に入れたり!

 

お母さんにしこたま叱られて、とうとう家出することになりました。

 

マリールイズは、新しいお母さんを探しはじめます。

最初は、へびのクリストフのお母さんに、子どもにしてと頼みました。

でも断られ、お次はあひるのせかせかおばさんの所へいきました。

せかせかおばさんにも断られ、次はかめのかみかみおばさんに、子どもにしてと頼みます。

ここでもマリールイズは断られ、次はアルマジロのしましまおばさん。

でもやっぱり断られ、ならばと次はお父さんを探しに、魔法使いのヒキガエルの所へいきました。

けれどもやっぱり断られ・・・、でもでもその代わり、子どもを探しているご婦人がいるということを聞きつけます!

 

マリールイズは、その人を追って駆けだしました。

誰だろう?どんなお母さんだろう?

 

そうして行き着いた先にいたのは・・・

 

「かあさん!かあさん!」

 

そこにいたのは、マリールイズのお母さん!

マリールイズは、おかあさんといっしょに、おうちへ帰りました。

                      

読んでみて・・・

いたずらをして叱られて、もうお母さんなんか大嫌い!家出してやる!

子どもによくあるシチュエーションです。

マリールイズは、新しいお母さんを探す旅にでますが、どこからも断られ、結局自分のお母さんの所へ帰ってきてめでたしめでたし。

子どもにありがちな、他愛もない家出話ですが、とても軽妙でユーモラスな絵本です。

 

家出すると意気込んでいるマリールイズを横目に、お母さんは慌てず騒がず。それならお腹がすくでしょうと、サンドウィッチのお弁当を作ってくれます。

大人にきりきりした所がなく、泰然自若と大きく構えているのが魅力的です。

行く先々のお母さんたちも、あっけらかんとにべもなく、マリールイズの申し出を断っていきます。

 

「いたずらっ子は、ひとりでたくさん。」

「もうひとりだなんて、とんでもない!」

 

いかにも子育てで忙しいおばさんらしい対応。

子どもに媚びへつらうことのない、きっぱりとしたお断りのやり取りが、軽妙に繰り返されていきます。

マリールイズも、家出しているのに、しんみりしたところは微塵もなく、ここがダメならあちらへと、変に屈託することなく、どんどん行く先を変えていくという楽天さ。

でもその度ごとに、ぴしゃっと断られ・・・。

からりとしたテンポのよいユーモラスなやり取りの繰り返しが、とても愉快です。

 

絵も、柔らかな線と色遣いが伸びやかで明るく、マリールイズやお母さんたちの表情も豊かです。

いたずらをしているマリールイズの、にやっとした悪い顔。

叱られたときのイヤイヤ顔。

行く先々で断られたときの、がっかり顔。

やけっぱちの顔。

そして最後の、本当のお母さんのところに戻れたときの、安心しきった、幸せに満ち足りた顔。

くるくる変わる表情が、とても愛らしくチャーミングです。

 

大人たちの、ちょっと人を喰ったかのような、ひょうひょうとした顔も魅力的。

みんなどことなく人なつっこさがあり、見ていて気持ちがゆるんでくるような気楽さ、気安さがあります。

テクストで語っていないところを、絵が語っていたり、気張っていないけれどしゃれている配色や構図も魅力的です。

最後は落ち着くところに落ち着く結末も、安心感があって、子どもたちも満足することでしょう。

 

家出という、子どもにとっては身につまされる⁇重大事件ですが、変にセンチメンタルになることなくさっぱりからりと、愉快にテンポよく進んでいく楽しい絵本。

のどかさとあっけらかんとした明るさ、気楽さ、安心感などが、みごとに溶け合い、軽やかな読後感が残るすてきにしゃれた絵本です。

読み聞かせのあと、

「ああ、おもしろかった。」

の声が、子どもたちの口から自然に出てくる、楽しい1冊です。

                      

今回ご紹介した絵本は『マリールイズいえでする』

ナタリー・サヴィッジ・カールソン文 ホセ・アルエゴ アリアーヌ・デューイ絵

星川奈津代訳  1996.8.20  童話館出版  でした。

マリールイズいえでする

ナタリー・サヴェジ・カールソン/ホセ・アルエゴ 童話館出版 2018年12月
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